EMIRI 6 取り敢えず気になるアイツ
「ソレクライ平気デス」
「でも、日本じゃダメなのよ」
納得がいかない様子のポーリー。撒いたスナックをついばむ鳩たちをじっと見ている。
(生き物との接し方は、自然豊かなカナダとの違いなのかしら。ポーリー、案外いいやつなのかもね)
恵美莉も文化の違いを実感し、外国人に日本人のモラルを押し付けることに疑問を感じたのだった。しばらく沈黙が続き、二人は鳩の食事を見続けた。するとその中に、変な歩き方をする一羽がいることに気付いた。
「あれ? その子、片足がないわ」
「ソウデス」
「どうしたのかしら? 鷹に襲われたのかな」
「自然ニハ、危険ガ、イッパイアリマス」
「歩きにくそうだし、痛そうね」
「キット痛カッタ。足ヲ切ルナンテ」
「・・・かわいそう」
「!!! ナンデ、カワイソウ!!?」
突然、ポーリーの声の調子が変わった。
「え?」
「何ガ、カワイソウデスカ!!?」
ものすごい剣幕で、顔を真っ赤にして怒るポーリーに、恵美莉は圧倒された。
「だ、だって足が無くなったのよ!」
「デモ、ガンバッテル!
一生懸命ガンバッテル!!
ナノニ、カワイソウハ失礼!!!」
「・・・・・・(ポーリー・・・)」
「エミリー、応援シテアゲテクダサイ」
この後、恵美莉はポーリーから目を逸らすことが出来なかった。真剣に怒る理由を二次的にではあるが理解して、そんなポーリーに対する印象が180度変化したのだった。
作品名:EMIRI 6 取り敢えず気になるアイツ 作家名:亨利(ヘンリー)