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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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EMIRI 6 取り敢えず気になるアイツ

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第3章 片足の鳩



「もう、何とかしてほしいわ」
退屈な大講堂での授業中、恵美莉は春樹と一緒に出席していた。
「みのりのことか。相当困ってるみたいだな」
「みのり? じゃなくって、ポーリーのこと」
「あの外人、また問題起こしてるの?」
「そうじゃなくって、私を見付ける度に、変な日本語の練習しに来るのよ」
「どんな?」
「昨日は青いTシャツで近寄って来て、『美味しい煎餅を見付けました』って」
「ただの世間話じゃん」
「それがそう簡単に行かないのよ」
恵美莉はポーリーのしぐさと表情を真似ながら、わざとたどたどしく
「ソレハ、トテモ美味シー、オ煎餅デスノデ、日頃ヨリ、オ世話ニナッテイル、高田先生ニ、1枚、アゲタッタ。って」
「ハハハハハ、あげたった!?」
「そのニュアンスの違いを聞いてくるのよ。面倒臭いことに」
「おもろいペットが出来たじゃん」
「みのりに押し付けたいわ」
「みのりも面倒だな。お金無いなら無いで、返済待ってもらえばいいのに」
「そんなことしたら、大学まで取り立てに来られたら困るんだって」
「・・・新しい彼氏にバレるから?」
「そうみたいよ。でも新しい相手が誰か、まだ教えてくれないのよ」
「恵美莉にも言えない相手って誰だ? ひょっとして先生とか?」
恵美莉はその言葉にギクッとした。自分と桧垣助教授との関係を知られるはずはないのだが。
「そ、そうじゃないでしょう。・・・さすがに」
「まさか、佐々木じゃないだろうな」
「え? 佐々木先輩?」
佐々木は春樹の友達で、みのりの剣道部の先輩の小峠主将とも仲がいい相手だ。
「うん。あいつ最近彼女と別れたはずなんだけど、また忙しそうにしてっからな。小峠とは(絶対怪しい)って噂してたんんだ」
「みのりと佐々木先輩なら、私たちに内緒にしそうよね」
「そうだな。それ当たってんじゃねえか?」
「そう言えば、返済してること、春樹君には内緒にしてって言われてたんだった」
「そんな約束、守ってないじゃないか」
「へへ、忘れてた。きっと佐々木さんに伝わったら困るからよ」
「間違いないな」