EMIRI 6 取り敢えず気になるアイツ
「オウ! 先日ハ付キ合ッタノ、ウレシカッタ」
「あんたら、付き合ってんの?」
みのりがちょっと引いた。
「そんなわけないじゃない! ポーリー、ちゃんと説明しないと誤解するでしょ」
「ハンコ買ウ、付キ合イデシタ」
「そうそう。で、ちゃんと口座作れた?」
「万事ヌカリナク」
「難しい日本語選んで使ってんなぁ?」
「でも、恵美莉はポーリーさんと、どうやって知り合ったの?」
「へ? 知り合ったて言うか。なんとなく目に入って来ただけよ、コイツ」
「“コイツ”デハナク、正シクハ、“コヤツ”デスネ」
「コイツでもコヤツでも同じ意味よ」
「同ジ意味デスカ? 違イハナイデスカ?」
「まったく同じ意味」
「ジャナゼ、2コノ言葉アリマスカ? 不必要ジャナイデスカ?」
「知らないわよ。そんなことまで」
「日本人ナノニ、日本語知ラナイカ?」
「やっぱ腹立つ」
「ソレハソウト、聞イテクダサイ」
「何よ。また変な騒動巻き起こした?」
「サクジツノ夜、私ハ、寮ノ部屋デ、クツロギマシタ」
「・・・うん、それで?」
「スルト、ドウデショウ。テーブルノ向コウノハジニ、黒イ毛ガ、見エルデハアリマセンカ」
「黒い毛?」
「ソレハナント、ソヨソヨト、動イテイマシタ」
「毛がそよそよ? なんか怪しい空気を感じる」
恵美莉とみのりは、身を乗り出して聞いた。
「スルト、アヤツハ、テーブルノ上ニ、ソノ顔ヲ見セタノデス」
「ふふ、アヤツだって」みのりが笑いを堪えられず噴き出した。
「ソレハナント、ゴキブリデシタ」
「げっ!」みのりの笑いは一変、嫌悪の表情になった。
作品名:EMIRI 6 取り敢えず気になるアイツ 作家名:亨利(ヘンリー)