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オオサカタロウ
オオサカタロウ
novelistID. 20912
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Ravenhead

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 不器用な手つきで封を開ける将吉を見ながら、海知は思った。どの順序で殺せばいいだろうか。難しいことから片付けるなら、まずは十野と指笛を呼んで、将吉も含めて三人とも殺す。警官一家に場所を伝えるのは、その後だ。島野とチクロンの三人で警官一家を迎え撃ち、めでたしめでたし。海知はチクロンの仕事用の番号を鳴らした。発信音がしばらくの間続き、海知が諦めかけたとき、通話が始まった。海知は何も言わず、反応を待った。荒い息が反響している。
「お取込み中?」
 海知が言うと、チクロンは電話の向こうで唸り声を上げた。それは反響音と相まって、ほとんど怪獣の咆哮だった。
「落ち着けって。お前、マジで狂ったわけ?」
 海知が言うと、チクロンはまた元の息遣いに戻ったが、ようやく言葉を思いついたように、言った。
「この、向こう見ずのとんま!」
 言い回しは、相変わらず珍妙だった。それでこそチクロンだ。海知は笑い出しそうになりながら、神妙な口調を保てるように、顔に力を入れた。
「お前、おれの雑誌に歯形つけたな? 雑誌ってのは、重版がないんやぞ。分かってるか? おれは、十野将吉には、なんもしてない。朝戸って警官一家が、お前んとこのガキを狙って、間違えて十野のガキを誘拐したんや。そっから色々あって、おれが世話してる」
「お前は、尻尾を掴まれてる。おれとの接点は、お前しか知らんはずや」
 チクロンが言うと、海知は笑った。
「まあな。おれの尻尾は長いからね。でも、今更そんなことはどうでもいいのよ。おれは今、チャラのヤードにいてる。島野も一緒に、警官一家を迎え撃つつもりや。法の番人の振りしとるチンピラを殺そうや。朝戸家が余計な事せんかったら、お前の家族は今でも生きてたぞ」
 チクロンが聞き役なのは、これが初めてかもしれない。今までは、仕事の愚痴ですぐ話題を攫われるのが常だった。海知が返事を待っていると、チクロンは言った。
「考えとく」
「もったいぶんなドアホ。また電話鳴らすから、すぐ出ろよ」
 海知はそう言うと、電話を切った。まだ、十野からの着信はない。あのボケ親父、一体何をしてる? 頭の中で呟いた海知は、自分からかけるべきではないと頭で分かっていながら、貧乏ゆすりに負けて十野の番号を鳴らした。
『電源が入っていないか、電波の届かない……』
 機械的なアナウンスが流れ、海知は舌打ちした。どいつもこいつも、思い通りに動かない。こっちに呼べないと、手が出せない。島野を送り込んで、十野にこの場所を知らせることはできる。しかしそれだと、指笛女子高生が宙ぶらりんのままだ。海知は、チクロンの思わせぶりな態度も気になっていた。『考えとく』とは。今までなら『殺す』と言えば大抵の相手は言うことを聞いたが、さっきは、どうしてもその言葉が頭に浮かばなかった。
 海知は、チクロンに電話を掛けた。
「お前、七人目はどーでもええの? 捕まったら、もう出られへんやろ」
「……、何の話?」
「とぼけんなや、ド変態が。先週まで案件ないんか、毎日電話かけてきてたやろ」
「ええのがおるんか?」
「こっちから寄越したるわ。どこにおんねん? その代わりお前、やることやったら、合流せえよ」
「住所を送る。お前、警察を寄越したら殺すぞ」
「お前を捕まえて、おれになんのメリットがあんねん。よし、これで仲直りな」
 海知は電話を切った。チクロンから届いた現在地の住所をコピーすると、将吉が写る写真を添付して、霧鞘に送った。短い本文をつけるのも、忘れなかった。
『見つけた』
 電話が繋がらない以上、十野に相談する手段はないはずだ。
 これで、指笛女子高生はチクロンが殺してくれる。
        
作品名:Ravenhead 作家名:オオサカタロウ