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オオサカタロウ
オオサカタロウ
novelistID. 20912
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Ravenhead

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 コメント欄に『ポエム?』と尋ねるコメントが追加されたとき、主ははっきりと首を横に振った。
『では皆さん、今までコテツを可愛がって頂き、ありがとうございました』
 主は、コテツの首の付け根を掴んで持ち上げると、両刃のナイフを喉に突き刺した。松虫は思わず画面から飛びのいて、棚に背中をぶつけた。コメント欄が『通報』というフレーズで溢れる中、その配信は頭が素手で引きちぎられるまで続いた。
          
 返り血で真っ赤になった竹田は、あゆみと克之が眠る寝室をやり過ごし、一階から引き上げてきたホースを部屋の真下に当てると、階段を下りてガスの元栓を開けた。こんな人間のやったことで、長い人生を苦しみながら生き抜く必要はない。それは、あまりにもかわいそうだ。少なくとも、最後が母子で一緒に寝る日でよかった。
 竹田はオデッセイに乗り込み、滝岡地区へと飛ばした。どうして、混ざってはいけない色が混ざったのか。原因は、海知に違いない。自分と『しごと』を結び付けられる、唯一の人間なのだから。ついに、あの向こう見ずな性格が災いしたのだ。そのせいで、せっかくバランスが取れていた人生を、捨てる羽目になった。もう今後、色は消えることがないのだろう。会った人間は、例外なく黒色に染まる。そうと分かっていれば、松虫に自宅の場所を聞いておけばよかった。七人目として、松虫のことは常に頭の中にあった。頭の中で台風が起きているように様々な考えが渦巻く中、一時間ほどオデッセイを走らせた竹田は、ひのき荘の前に停めると、五年前に訪問したときとは真逆の態度で一〇三号室のドアを蹴り開けた。部屋はもぬけの殻で、窓から雨が吹き込んだ跡すらあった。
「あぁ!?」
 予測が外れた竹田は、犬が吠えたような音を喉から絞り出した。
「海知さーん! 海知さぁーん!」
 部屋の壁をくまなく蹴って穴を開けながら、竹田は叫び続けた。パソコンを窓から投げ、雑誌に次々歯型をつけ、机の引き出しをひとつ残らず開けたとき、黒のスプレー缶が転がり出てきて、竹田はキャップを飛ばすと、中身が出るかどうかを試すために大きなバツ印を書くと丸で囲い、壁一面にスプレー塗装を始めた。それは最初こそ意味のない象形文字のような代物だったが、最後には意味を成した。全てひらがなだったが、意味は通じるだろう。
『とおのまさよしになにをした』
 それは竹田にとって、本当に気がかりなことだった。一体、十野将吉に何をしたのか。いや、何が起きているのか。竹田は部屋から飛び出ると、オデッセイに乗りこみ、元栓を閉めるために自宅へ戻る道を飛ばし始めた。
     
作品名:Ravenhead 作家名:オオサカタロウ