小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
オオサカタロウ
オオサカタロウ
novelistID. 20912
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

Ravenhead

INDEX|13ページ/38ページ|

次のページ前のページ
 

 海知は一番の悩みから解放されたように、笑った。島野はまだ震えが止まらない体をシートに押し付けながら、歯を食いしばった。本当に起きたことなのか、頭が記憶に刻むことを頑なに避けようとしている。海知はスマートフォンを耳に当てて、相手が電話に出るなり、言った。
「チャラ、夜分ごめん。ちょっと工場開けて。え? そうやな、のっぴきならん事態や」
    
 二十分後、通行人からの通報で、二台のパトカーが白いハリアーの衝突事故現場に到着した。助手席を貫通した丸太を見た警察官は、歪んだドア枠から血が流れ出しているのを見て、思わず目を逸らせた。浩義の怪我は、むち打ちと右手小指のヒビだけだった。
 孝太郎が、浩義の運び込まれた病院から署に立ち寄り、一旦自宅へ戻ったのは深夜で、車庫にはハイエースが戻ってきていた。荷室には、頭の右側を包帯で雑に手当てされたタガメが寝かされていて、居間には里緒菜がいた。
「兄ちゃん、乗ってたんは自分と春香さんだけやって。そんなわけないよね?」
 里緒菜の言葉に、孝太郎はうなずいた。フロントが大破したハリアーは、この目で見た。リアバンパーには、黒い塗料が付着していたが、真っ白なLEDライトで照らした警察官は、『これ、一色じゃないっすね』と言った。何層にも塗り重ねられていて、雨で混ざってしまっている。孝太郎は、その塗料片の位置がやや低いことに気づいて、『スポーツカーか?』と聞いた。相手のリアウィンドウが粉々になる速度差で衝突したはずだが、衝突した側の車の破片は、一切落ちていなかった。そして、見送ったときに確実に後部座席に乗っていた浩太の姿はない。
「誘拐ってことかな」
 里緒菜が言うと、孝太郎はうなずいた。
「おそらくな。相手は、浩義の仕事を知っとる。あと、これはおれの勘やが。浩太は死んでる。ビビらすつもりで当たったら、見当違いの方向に車が飛んでって、その場で咄嗟に考えたんやろうな。悪知恵の働く奴や」
 孝太郎は、浩義の手のレントゲン写真をスマートフォンで見ながら、小さく息をついた。
「里緒菜、一週間ぐらい休めるか」
「もう、連絡はしたよ」
 里緒菜の行動の速さに、孝太郎は微笑んだ。
「ライターは、弟に渡したって? 島野恭介やな?」
「そう。島野が特に何かやらかすようには見えんかったって、タガメさんは言ってたけど」
「お前、頭の右半分、バイクで削り落としたんやろ? なんとでも言いよるぞ」
 孝太郎はそう言ったとき、レガシィを不器用に車庫入れする島野の姿を思い出した。レガシィの持ち主は、海知。あのタイプの犯罪者には、犯罪者同士の暗黙のルールすら、通用しない。違反切符は何度も切ったし、些細な迷惑行為でパトカーに乗せたことは、何度もある。しかし、これだけのことをやってのけるとしたら、見た目以上に危険だ。
「留守番、頼めるか」
「うん。どこ行くの?」
 里緒菜が顔を上げると、孝太郎は上着を羽織り、カローラスポーツの鍵を掴んだ。
「パトロール」
     
作品名:Ravenhead 作家名:オオサカタロウ