第三話 くらしの中で
その四
結婚当初は夫は家に落ち着かず、子供が出来ても職場から直行して帰宅することはなかった。まじめな人間なので女性関係は一生無い人だったが、何しろ毎日といっていいほど遅くまで碁会所で碁を打ってから帰宅していた。未亡人の碁会所の女主人が私にやきもちを焼くほど碁会所に入りびたりだった。
そんなわけで、私の家では俳句の先輩のような温かい夫婦愛が生まれるはずもなく、私はずっと癇を立てて暮らしていたので、子供に良い影響を与えられず子供達は二人とも問題児としてその後長年苦労する羽目になった。
夫だけが悪いとは言えないが、もう少し我家に馴染んでくれて、仕事が終ったら家に帰って子供と夕飯を食べるぐらいの気遣いはして欲しかったと思う。
作品名:第三話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子