第三話 くらしの中で
その三
私の家がそれほど身分が高いともいえないが、夫の家と比べると後に聞いた他人の話では「逆玉の輿」と言われていたようで私の家にくれば世間体も良いし、息子の生活も安定するだろうとの義母の思いがあったようだ。
私も白黒をつけるほどの決断力もなく、ただ毎日通って来る夫を拒否することもなく、母が新居として邸内に家を建て始めたので成り行きでそこに住むことになった。
私の母は儀式などちゃらんぽらんで良いと思うような人だったが、義母の考えで輿入れの箪笥一式を買ってくれて、式には人並みに島田を結って親族を招き神前結婚式を挙げることになった。
作品名:第三話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子