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火曜日の幻想譚 Ⅱ

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152.大切なモノ



 昼休み、いつものコンビニにお弁当を買いに行きました。サラダやパスタ、お茶を手に携え、レジの順番を待っていたときのことです。

 私が並んでいる列の脇に、ちんまりとしたワゴンが置いてありました。そのワゴンには、期限が近いパンや売れなかったカップ麺などが、安い値段で置かれています。いわゆる見切り品というもの。その見切り品のワゴンには、小さいフィギュア付きのお菓子もありました。あまり詳しくはないけれど、確か前クールのアニメに出ていた美少女。彼女は、そのような場所でも健気に笑顔を咲かせていました。
 みんなアニメの期間が終わると、見向きもしなくなっちゃうんだなぁ。流行を追っかけるのも、確かに悪いことじゃないと思うけどさ。色んなモノの消費が早くなっちゃって、何か大切なモノ、失ってないかな。そう思っているうちに、私は列の先頭になり店員が私を呼び寄せます。それに気づいた私は、慌ててそのレジへと向かいました。
 精算を終え、パスタを温めてもらっている間も、私はその美少女について考えていました。なぜか時代物の小説にいる、見受けされない女の子のように思えてきてしまったのです。私は彼女に感情移入して、悲しくなってきてしまいました。そしてこれも何かの縁だろうと思い、ワゴンから美少女を救い出して購入の意志を告げたのです。

 その瞬間。いつもさわやかに挨拶をしてくれる顔見知りのレジの娘が、汚いモノでも見るような目で一瞬私を見た後、一切目を合わさなくなってしまったのです。

 どうやら、私自身も何か大切なモノを失ってしまったようです。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅱ 作家名:六色塔