火曜日の幻想譚 Ⅱ
233.駄菓子屋
いろいろあって失意の中、実家に帰ってきていた。
悲しみ、つらさ、イライラ。いろいろな負の感情が混ざりあった心持ちの中、気だるく部屋のカーテンを開ける。今の自分の気持ちと反比例するようないい天気。両親は、「しばらくゆっくりするのもいいんじゃない」と言ってくれたが、別にどこかに行きたいわけでもない。だが、このままではいけないという焦燥感も、心にどんよりと忍び寄ってくる。
「こういうとき、どうすればいいのかな……」
着替えながら漫然と考えていると、突然、おなかが鳴った。食卓には、恐らく母が作った朝食が並んでいることだろう。
「朝食もいいけど、何か、久しぶりに腹いっぱい、食いてぇなぁ」
無意識にそんなことをつぶやいていた。だが、そんな自分のつぶやきが、思わぬアイデアを呼び覚ます。
そうだ、ありったけの金〈といってもたかが知れているのだが〉を持って、駄菓子屋へいこう。そして、満足するまで腹いっぱい、駄菓子を食らってやろう。お店に子どもたちがいても気にしない。むしろ彼ら、彼女らに見せつけてやるくらいの気持ちで、駄菓子を食らい、ゲームに興じてやる。今日だけ、1日だけ、駄菓子屋にたむろするやつらに資本主義の恐ろしさを見せつけてやるんだ。そうすれば、この暗い気分も晴れてくるに違いない。よし、それに決めた。
朝食もそこそこに、幼少期、通っていた駄菓子屋へと勢い込んで赴く。だがそこには、大きなショッピングモールが立ちはだかっていた。
資本主義の恐ろしさを知ったのは自分のほうだった。