火曜日の幻想譚 Ⅱ
176.ソックスパニック
寝坊をした。家を出なければならない時間まで、あと10分。急いで着替えを済ませたが、靴下を履いていないことに気づく。慌ててタンスを開けるが、そこにも靴下は一足もない。
「まとめて干しっぱだったか」
窓を開け、洗濯物を取り込む。とりあえず洗濯ばさみから取り外し、ポイポイと室内に放り込む。
「さて、目的の靴下は……、と」
とりあえず片方の靴下を手に取るが、そのもう片方が見つからない。
「これは……、柄は同じだけど色違いか」
「こっちは……、同じ柄だけど同じ右側だな」
「これか? いや違う、これはパンツだよ」
そうやって靴下を探しているうちに、期限の10分は過ぎてしまう。
あきらめて会社に遅刻の連絡を入れ、しばらく靴下合わせパズルで遊ぶことにした。