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火曜日の幻想譚 Ⅱ

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177.ゴミ人間



 言うのも憚られる話だが、実は汚部屋に住んでいる。

 一人暮らしのワンルームにはこれでもかと言うほどゴミが散乱し、その高さはベッドに並ぶほどだ。世にはベッドどころか天井近くにまで積む人もいるそうだが、今は下を見て安心している場合ではないだろう。
 こうなってしまった理由は簡単だ。仕事が忙しいこと、掃除をする癖がないことの二つが原因だと思う。

 仕事はどうしても残業や徹夜が多い業種だ。だいたい上司がアホだったり、部下がやらかしたりするのが理由だが。すると必然的に、食事はコンビニ弁当やカップ麺で済ますことが多くなる。そうなると、それらの容器が大量に家に出ることになる。そして仕事が忙しいわけだから、朝も夜も一分でも長く寝ていたい。したがってギリギリまで寝てしまう。ゴミ出しをサボる。そういう塩梅だ。
 掃除に関しては昔から好きじゃなかった。学校の掃除だって、音楽室など先生があまり見回りに来ない場所ばかり選んで適当にやっていた。多分、そういうことに向いていない性分なんだろうと思う。

 だがやはり、こんな生活を続けていては支障が出てしまう。なんとか汚部屋を脱出したい。そう思い、とある申請を市に提出することにした。

 数カ月後。奇跡的に申請が通り、我が家にぞろぞろと清掃員たちがやってくる。そしてゴミを持っていってくれた。

 何をしたかって? 少し発想の転換をしたのだ。ゴミ捨て場へゴミを持っていけないのなら、ここをゴミ捨て場にしてしまえばいい。そう考えて、ゴミ捨て場の申請を出しておいたのだ。作戦は見事に成功し、部屋のゴミを持っていってくれた。

 だが持っていったゴミの量は、あまりにも少なかった。よく調べたら、今日は火曜日。燃えないゴミの日だ。どおりで、隅に置いておいたかけた茶碗や蛍光灯しか持っていかなかったわけだ。うちのゴミは前述したように、弁当の容器などが大半。木曜の燃えるゴミの日まで待たないと、部屋はスッキリとしないだろう。清掃業者を呼ぶのは、その日以降で構わないはずだ。
 そう、ゴミがあらかた片付いたら、次は掃除だ。そして掃除をする癖がついていないのなら、誰かに掃除をしてもらえばいい。これも当たり前の論理だ。

 待ちに待った木曜日。我が家に、再び清掃員たちがぞろぞろやってくる。そしてものすごい勢いでゴミを片付けていく。ああ、あの一角、久々に見たな。電気スタンド、あそこに埋もれてたのか。そんなことを思いながら、物がなくなっていく部屋を眺める。

 すると、いきなりガッとえりを捕まれ、俺自身が燃えるゴミとして持っていかれた。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅱ 作家名:六色塔