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火曜日の幻想譚 Ⅱ

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180.さいころ



 暇なのでさいころを振って遊んでいた。

 2、6、5、4、4、2、3……。昔の偉い人が、どうにもならないものの一つに挙げただけあって、凡人の私には出目の予想もつかない。一個選択すれば1/6だ、たまたま当たることはあるかもしれないが、その目が出た理由を説明するには、深淵をのぞき込むほどの難しい理論が存在しているのだろう。そんな営みが、何回、何十回、と繰り返されていく。
 私が振るだけじゃない。今までも、世界で大量のさいころが人の手によって振られてきた。占いのため、賭博のため、すごろくやTRPG、ゲーム内の乱数生成もさいころと捉えれば、数え切れないほどのものが、数え切れないほどの回数、振られてきたことになり、きっと今、このときも振られているに違いない。
 そうして振られることによって、果たして何が起きただろうか。いや、さいころは何をしてきただろうか。恐らく、多数の敗者と、少数の勝者を生み出してきたに違いない。その二つの分岐点をつかさどる物体、それがさいころなのだ。そして、この物体によって作られた大勢の敗者の中には、無残にも殺された者も少なくないだろう。

 だから、ダイスっていうのかな。やっと出た1の真っ赤な目を見ながら、自嘲的に笑った。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅱ 作家名:六色塔