火曜日の幻想譚 Ⅱ
201.ねじれたアメ
ねずみ色のどんよりとした空。
ドロドロと腐った粘液が流れる用水路。
視界全てがよどんだ世界。
ベロベロとねじれたアメをなめながら。
僕は三輪車で進んでいく。
用水路には変色した人形がプカプカと浮かんで。
遠くの煙突はモクモクと汚い煙をはきだした。
いろんな汚い色がぐちゃぐちゃで、ゆがんで、明滅して、暗転して。
視界がクルクルと一向に定まらない。
近くのどこかで嫌な絶叫が聞こえて。
キリキリと締め上げるような不協和音。
何もかもが狂った世界。
ペロペロとねじれたアメをなめながら。
三輪車で進んでいくんだ。
何か大きな機械のプレス音が延々と鳴り響く。
金切り声のような炸裂音とともに途絶えてく。
いろんな汚い音でぐちゃぐちゃで、耳の処理が追いつかなくて。
めまいとはき気が止まらない。
鼻が曲がるような悪臭が立ち込めて。
舌にこびりついたどす黒い血の味。
いろんなものが壊れた世界。
レロレロとねじれたアメをなめながら。
三輪車で進んでいくんだ。
口に広がる血の味と、もうよく分からないアメの味。
何もかもがぐちゃぐちゃで、もう終わりにしてしまいたくて。
こんなイカレきった世界を、僕はどこまでもどこまでも三輪車で進んでく。
ねじれたアメをなめながら。
三輪車は加速して、加速して、加速して……。
バイバイ、サヨヲナラ。