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火曜日の幻想譚 Ⅱ

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211.傘どろぼうをやっつけろ



 コンビニで買い物をしていたら、傘を盗まれた。買い物をしているほんの数分の間に、傘立てにさしておいた傘を持っていかれたのだ。安いビニール傘とはいえ、とても悔しい。傘を買えばいいのにそれすらも忘れて、僕はどしゃ降りの中帰路を走っていた。

 家に帰ってシャワーを浴びながら、何か対策は取れないだろうかと考えた。

 買い物中も、傘に気を配っておく? でもお会計中に、いきなり外には出てはいけない。傘に何か目印でもつけておこうか? これじゃ、根本的な解決にはならない。自転車のように、傘にチェーンの鍵でもかけてしまおうか? どろぼうに、「こいつ必死だな」と思われるのもしゃくに障る。ようするに、どろぼうが傘を開いた瞬間、何らかのトラップが発動するようにしたいんだ。一つ案を思いついた僕は、そのための準備をして、再び雨になるのを待ち続けた。

 そして、待望の雨の日。僕は用意した物を持って、コンビニにお弁当を買いに出かける。そして、傘立てにさした傘に仕掛けを施しておく。

「ぎゃ――――っ」

お会計を済ましている最中、外からけたたましい叫び声が上がる。ゆったりと支払いを済ませ外へ出てみると、叫び声の主と思われる女性が泡を吹いて倒れていた。

「ちょっと、やりすぎたかな」

僕はそう呟いて、傍らに転がっている傘を手に取った。そして、それに「ぶら下がっている」ものを持ってきた虫かごに入れてゆく。

 実は傘立てに入れた後、傘の中にたくさんのクモを忍ばせておいたのだ。それを知らずに開いた人は、雨滴ではなくクモの糸に囲まれる、そういう仕掛けだったというわけ。

 クモを回収し終えた僕は、その傘を差して爽快な気分で家路についた。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅱ 作家名:六色塔