火曜日の幻想譚 Ⅱ
124.光の主張
なあ、聞いてくれよ。最近さ、えらく頭にきている事があるんだよ。
おまえらニンゲンとは結構長い付き合いだし、俺らの能力を買ってくれている事は、すごくよくわかってる。でも、それでもさ、もう少し俺たち、脚光を浴びてもいいと思っているんだ、光だけに。
……コホン。まあ、今のは聞かなかった事にしてもらってだ。
ここんところ、日焼け防止だとか、紫外線がお肌に悪いとか、みんな俺たちを避けやがるんだ。でもさ、太陽からの光━━日光があって、おまえらニンゲンは生まれたんじゃないのか? それに、俺ら光がいるから、ニンゲンが食べている作物は育つんだし、ニンゲンそれ自体も日光を浴びる事でビタミンDとやらを生成してるってこと、忘れちゃいないよな?
他にもあるんだ。前に『佐川男子』ってのが、もてはやされていたじゃねえか。でもよ、佐川の兄ちゃんどもが荷物を持ってくるのは誰のおかげだい?
おまえらニンゲンが、アマゾンとかで入力した情報を運んでまわっている、俺らのおかげじゃねえか。ネット回線の中で佐川男子のように、それこそ光速で情報を運んでいるのは俺らなんだぜ。もう少し俺らの事も、『佐川男子』のようにちやほやしてくれてもいいと思うんだ。
なんだって? おまえらには風情がないって?
何を言ってんだよ。俺らだってやろうと思えば、風情をかもし出せるんだぞ。
きれいでロマンチックな星空は、俺らが長い時間をかけて、おまえらの元へ来ているからできているんだぜ。あまりにも遠くから来ているせいで、元の星がなくなっても分からないなんて、宇宙の壮大さに気付かされるのも、まさに俺らのおかげじゃねえか。
星空だけじゃない。ビルディングがひしめいている夜景だって、俺たち光の組体操じゃねえか。ワイングラスを傾けているそこのカップルどもも、少しは俺らに敬意を払ってくれても良いだろう?
とにかくだ。秒速約30万キロでかけずり回っている俺らにも、もっと光を! って事さ。
……あぁ、ごめん。今のもつまらなかったから、カットで。