火曜日の幻想譚 Ⅱ
137.とりかえっこ
夜道を歩いてたら、突然顔に何かが当たった。
「あいたっ」
何かと思えば、もち。正月とかに食べる、あのおもちだ。しかもつきたての焼きたてで、とてもおいしそう。拾って一口ほおばる。やっぱりだ、まずいわけがない。
夢中で平らげて空をながめたら、月のうさぎが仕事の手を休めてこちらへ手を振っていた。
もちのお礼に、キャロットケーキをこしらえた。柔らかくてふかふかで、絶対おいしいはず。ちょっと味見する。最高だ、きっと喜ぶだろう。
「ほーれっ」
宙に放り投げられるケーキ。オレンジのそれは、運良く月に引っかかる。気付いたうさぎが仕事の手を休めずにかぶりつく。そのときのにんまりした顔、どうやらお気に召したようだ。
うさぎがケーキをあとかたもなく食べ尽くした頃、ミトン型の鍋つかみをはめて手を振った。