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火曜日の幻想譚 Ⅱ

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140.近くにいる人



 なあ、おい。どうしたんだい。
 なんで、「誰も理解してくれないの」何ていうんだい? ここにいる僕が、君のそばにいる僕が、誰よりも君のことを分かっているのに。
 つらいときも、悲しいときも、もちろんうれしいときも、どんなときだって一緒にいたじゃないか。だからそんなことを言わないで、落ち着いて話をしてみなよ。そうすれば、何かが変わってくるかもしれないよ。
 うん、うん。そうなのかい。だから、誰も自分のことを分かってくれないなんて言っていたんだね。でも僕はここにいるだろう。ちゃんと話を聞いているだろう。なるべく気持ちを尊重しているだろう。
 もちろん、分かってるさ。ずっと一緒にいすぎたせいで、それが当然になっちゃたんだ。そりゃ、僕としては不服だけど、仕方がない部分もあるさ。だから、今みたいなつらいときも、僕がいることを忘れないで頑張って乗りこえていこう。
 そう、大丈夫。君はちゃんと力を持ってるんだから、努力をし続ければ結果はついてくるさ。さあ、今日は疲れたろう。おいしいものを食べて、ゆっくりして、いっぱい眠ろう。明日になれば、またいろいろなことが変わっているから、君は変わらずいつもどおりでいればいい。
 じゃあ、また明日。おやすみなさい。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅱ 作家名:六色塔