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はなもあらしも ~垂司編~

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第八話 決着


 さらに三日が過ぎ、いよいよ試合当日がやってきた。
 ともえは朝から張り切って道真と共に笠原道場へと向かった。

「さて……」

 垂司はすっと立ち上がると自室を出た。

「おや、兄上。どこかへお出かけですか?」

 ちょうど廊下にいた真弓にそう問われ、垂司はいつもの調子で飄々と答える。

「私にもやるべき事があるからね」

 そう言い残して去っていった兄の後ろ姿を、真弓は微笑みながら見送った。


 * * *

 試合は長引いていた。
 日輪道場からは、幸之助と代表である道真とともえ。そして試合の公正を期すため、立会人として他の道場から選ばれた師範が二名が共に笠原道場へと集い、決戦の火ぶたは落とされた。
 試合の運びは、近的と遠的両方を行ない、その的中数の多い方の勝ちという、しごく簡単なものとなっている。
 互いの実力は拮抗しており、試合は延長に次ぐ延長となっていた。

「……っ」

 誰にも気付かれないようにして、ともえは静かに息を飲んだ。
 試合が長引くにつれ足の痛みが増してきている。これでもかと集中しているのに、足が言う事を聞くのを拒む。

「那須さん、あなたの番よ」

 またも的中させた橘がそう告げる。

「はい」

 足の痛みに苦しんでいる事など、誰にも知られたくなかった。
 負けるかもしれない―――ともえはそう覚悟すらしていたが、それに言い訳を付けたくなどなかった。
 精神を集中し弓を引く。負荷がかかればかかるほど、足にも負担が押し寄せてくる。痛みをこらえて矢を放った。が、矢は虚しく的から外れた。

「ここまでのようね」

 橘が口の端を上げたその瞬間―――

「失礼します」

 凛とした声が道場内に響いた。聞く者の心を蕩けさせるその声に、ともえはハッとし振り返る。

「垂司さん!」

 そう名前を呼ばれると‘良くやったね’と労わんばかりの眼差しを、垂司はともえに向けた。