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はなもあらしも ~垂司編~

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第六話 意識


 ともえが怪我をしてから、早くも一週間の時が過ぎた。しかしともえの怪我の治りは思ったよりも遅く、射位に立つ時間も一日二時間ほどしか持てないのが現状となっている。
 ともえはそんな自分に強く苛立ちを覚えていた。
 
 そんなともえの様子を垂司はずっと気にかけていた。もう関わるのはやめよう、お互い傷つけ合うだけだ―――そう思っているのに、目がともえを無意識に追ってしまう。
 だったらいっそ近付いてしまえばいいと思った。近付いて近付いて見えなくなってしまえばいい。垂司は意を決して、ともえの部屋へと向かった。


「ともえちゃん、いる?」

 突然かけられたその声にともえは純粋に驚いた。

「います……」

 垂司は中から返事があった事にほっとした。
 別にこのまま怒鳴り散らされたって構わないのだ。それでともえの気が少しでも晴れるなら、垂司の望みは叶ったも同然なのだから。

「ちょっと、いい?」
「はい」

 そう言うとともえは障子をそっと開けた。
 そこには相変わらず穏やかな表情の垂司がいた。
 一週間前に気まずく別れてから、一度もこうして顔を直接見合わせてはいなかった。

「今からちょっと出かけないかな?」
「え?」
「寄席でもどうかなって」

 垂司は一週間前の事など忘れたかのように柔和にともえに語りかける。
 ともえはそんな垂司の態度に戸惑ったが、断る事も出来なかった。そんな答えはともえの中にはなかったからだ。

「はい」

 ともえが小さく頷くと、垂司は少しだけほっとしたように小さく息を吐いた。