はなもあらしも ~美弦編~
終結
美弦がともえの婿となると宣言してから、早一週間が過ぎた。
幸之助の口から美弦とともえの事を聞かされると、日輪家の誰もが二人を祝福した。
そして今もなお、ともえは日輪道場で修行をしている。
やはりともえは弓が好きで、急に許婿が出来た所で浮かれてばかりもいられなかったのだ。
タンッ! という気持ちいい音が早朝の道場に響く。
「ともえ、今日も早いね」
自分以外誰もいないはずの道場に、耳慣れた声が響き渡る。
「美弦。どうしたの?」
「どうしたも何も。試合は終わったんだしさ、少しは休めばいいのに」
「ふふっ、それは無理。だってもう癖になってるもの」
「僕を起こしに来る事を癖にして欲しいな」
「えっ?」
さらりと美弦からはかれた言葉に、ともえは目をぱちくりとさせた。
「朝、目が覚めて一番最初に見るものは天井よりともえの方がいい」
「えっ、でも、えぇっ!?」
「僕達夫婦になるんだから、何をそんなに焦る事があるの?」
ともえは驚きに言葉を失ってしまう。そんなともえの様子を見て、美弦はさも可笑しそうに笑った。
「あはは! ともえは本当に素直だなぁ!」
「か、からかったのね!」
美弦に一杯食わされたと気付き、ともえは自分の頬が熱くなっていくのを感じると、両手で頬を押さえた。
作品名:はなもあらしも ~美弦編~ 作家名:有馬音文