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はなもあらしも ~美弦編~

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「……からかってなんかいないよ」

 ふいに美弦の声がわずかに低くなる。
 真っ直ぐにともえの顔を見据えるその表情は、真剣そのものだった。
 
「見ててよ、ともえ。あと三年もしたら僕は、誰よりも格好良くて誰よりも背が高くて誰よりも強くなるから。ともえが自慢できる男になる」
「美弦?」
「だから……そしたらその褒美に、朝目が覚めて一番最初にともえの顔を見る権利を僕にちょうだい」

 真面目な顔でそう言った美弦に、今度はともえが微笑んだ。とても、優しく――――

「美弦。美弦は今だって私にとって誰よりも強くて格好いいよ」
「……ぶーっ、背が高いのが入ってない」
「えぇ!? だってそれは……真弓さんとか道真君とか」
「気に入らない! 僕は全部全部ともえの一番じゃなきゃ嫌だ!」
「あのねぇ……」

 ぷいとそっぽを向いてしまった美弦に、ともえはやれやれと言った風で小さくため息をつく。けれどそれはとても幸せなため息だった。

「美弦」

 そっと名前を呼ぶ。意地を張ってやるつもりだった美弦だが、愛しい声には逆らえない。

「っ」

 美弦が振り向くとともえの顔がすっと近付き、そうと知覚する間もなく唇に温かい感触が触れた。

「と、も……」
「誰よりも何よりも美弦が好き。大好き。それじゃダメなの?」
「……ダメじゃない」

 美弦がそっとともえの背中に手を回すと、ともえもそれに応えるように美弦をぎゅっと抱きしめた。

「ともえ」
「なに?」
「もう一回」







          はなもあらしも  美弦編  完