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はなもあらしも ~美弦編~

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 * ** 
 
 試合の運びは、近的と遠的両方を行ない、その的中数の多い方の勝ちという、しごく簡単なものだった。
 まず、橘とともえが二人並んで近的に挑む。まだ霞の取れない中、ともえはしっかりと霞の向こうにある的を目に焼き付けた。
 橘の第一射は見事的中。

「当然ですわ」

 ともえの第一射。こちらも的中。
 次に氷江と真弓が近的に挑む。そしてどちらも的中。
 どちらも一歩も引かぬ接戦が続き、的中数も同数となっていた。
 本来団体戦は3人一組で行うのが通常だが、今回は笠原道場の決めた特別ルールが適用されている。このように同数で並んだ場合、次の遠的で決着をつけるようだ。
 ともは弓を構え、すうっと息を吸い込んだ。
 道場に立てなかった日から、美弦に教えられたイメージトレーニングを毎日続けてきた。風呂に入っている時も、寝る時も、どんな時でも流れるようなイメージを頭に描きつづけてきたのだ。
 矢をつがえ、弦を耳の後ろまでしっかりと引く。
 そして的と風を読み、一気に矢を放った。

 タンッ!

「的中!」

 続く橘も的中させ、氷江と真弓も同じように的中させた。

「これは耐久戦になりそうだな」

 一通り競技が終了したところで休憩が入り、汗を拭いながらぼそりと氷江が呟く。それにつられ、ともえは空を見上げた。霞はまだ晴れない。

「ともえ、大丈夫か?」

 心配そうに美弦が声を掛けてきた。

「うん。今日は調子がいい」
「そっか。 足は?」
「足も大丈夫」

 とは言ったものの、このままずっと決着がつかなかったら、さすがに足にも痛みが出て来る可能性はある。それを案じて美弦は視線を強くして遠く視線を馳せた。

「っ」

 視線の先には橘がいた。橘も美弦の視線に気付き、きっと睨みをきかせてくる。しかし美弦は橘に向って不敵に微笑んだ。

「美弦?」

 不審に思ったともえが問おうとした所で試合再開の声がかかり、美弦はすぐに射位に立つ氷江の隣りへと向かった。
 二人の試技が終り、橘とすれ違い際、美弦が何やら呟いた。
 と、途端に橘の顔は青くなり、何かを我慢するように全身を震わせてともえを睨んできた。

 えっ? 何っ!?

 驚くともえは、美弦に助けを求める。が、美弦は相変わらず何事もなかったように悪戯っぽく笑っているだけだ。

「ちゃんと集中しろ」

 そう美弦に言われ、ともえは集中を再開した。

 橘の様子がおかしい事は気になるが、他人の事を気にしている余裕などない。
 床の感触をゆっくりと確かめ、ともえはいつも通り弓を構えた。
 そして次の矢も的中させた。

 よし、いい感触!

 会心の出来に心の中で喜ぶと、場内がざわめいた。