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はなもあらしも 道真編

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 * * *

 時間の経過と共に道場には門下生達が増えて行った。気付けば昼近い時間となり、ともえのお腹が盛大に鳴る。

「お腹空いた〜。そろそろ休憩しない?」

 隣りにいるはずの道真を振り返ると、そこに道真の姿はなかった。

「あれ?」

 不思議に思いぐるりと見回すと、いつやって来たのか、入り口で美琴と何やら話していた。
 美琴の姿を見つけてともえが近寄る。
 相変わらず可愛らしい美琴は、若草色の着物に、小花の簪を結いあげた髪にさしている。手元には少し大きめの桃色の風呂敷を持っていて、その立ち姿はまさに可憐な少女そのものだ。

「美琴ちゃん!」
「あ! ともえさんこんにちは。お昼を持って来たんです。ともえさんも良かったらご一緒に」
「え、いいの?」
「はい! そう思ってたくさん作ってまいりましたの」

 そう言うと美琴は手に持っていた風呂敷を顔の辺りにまで掲げた。大きな風呂敷の後ろから美琴の愛らしく小さな顔がひょっこりと覗くその様に、ともえは知らず笑みがこぼれた。

「美弦は先に縁側に言っているんです。今日は天気も良いし、庭でも見ながらのんびり食べようって言って」
「じゃあ行くか」

 そう言って道真は美琴の手から風呂敷を取り、さっさと歩き出した。
 美琴とともえは顔を見合わせた後、それに続く。

「ともえさん」
「あーっと、えっと、私達ってほら、年も近いし敬語はやめない? 私はほら、こんな感じで喋っちゃってるし」

 少し照れくさそうにともえが言うと、美琴は嬉しそうに微笑んだ。

「はい! じゃなくて、うんっ! よろしくね、ともえちゃん」

 顔を見合わせ微笑みあった二人は、道真のあとを追った。