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はなもあらしも 道真編

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「ほら、ちょっと余計な事を考えただけで駄目だ。お前は氷江や橘に馬鹿にされて悔しいから、強くなりたいって焦り過ぎなんだ」
「あ……」

 軽い衝撃を受けた。
 そうだ、弓道は心と体が調和していなければ出来ない武芸なのだ。ともえの心はとにかく少しでも強くなりたいと気負いすぎていたのだ。
 ともえが自分の問題点に気付いたらしい事を見て取ると、道真はふと口元を綻ばせた。

「そう言えば、昼から美琴が来るらしいぞ」

 ともえに気付かれぬようにすぐに顔を戻して言った道真に、ともえは顔を明るくした。

「本当? 美琴ちゃんに会えるんだ!」

 美琴はともえにとって、早くも心安らぐ存在になりつつあった。あの可愛らしい笑顔と話し方がとても好ましく、もっと沢山の時間を共有したいとさえ思っている。
 自分には無いものをたくさん持っている美琴は、同じ女性であるともえから見ても本当に素晴らしい女性だと思う。
 美琴も幼い頃からこの道場に出入りしているし、道真達とも仲が良いだろう。あれだけ可愛くておしとやかなら惹かれぬ男はいないはずだ。
 道真君も美琴ちゃんみたいな可憐な女の子が好きなのかな?
 そう考えると、一瞬胸の辺りがチクリと痛んだ。

「……あれ?」
「なんだ、どうかしたか?」
「なんでもない! よし、練習練習! あ、そうだ。もし私の悪い所があったらすぐに教えてくれる?」

 胸の痛みはすぐに治まり、ともえはその事を忘れるかのように気持ちを切り替えた。
 焦って心の状態を乱していはいけない。だが、少しでも強くならなくてはいけない事は事実だ。時間がないのだから。
 道真のおかげで冷静さを取り戻した所で、道真がぼそりとともえの言葉に応えた。

「―――能天気、短気、声がでかい」
「ちょっと! それってただの悪口じゃない!!」