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はなもあらしも 道真編

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「これは耐久戦になりそうだな」

 汗を拭いながらぼそりと氷江が呟く。

「大丈夫か?」

 道真が声を掛けてきた。

「問題ないわ。足も痛くないし、集中出来てる」
「そうか。ここまで実力が拮抗しているとはな……」

 ふうと空を見上げる道真につられ、ともえもまだ靄の晴れない空を見上げた。
 と、氷江がこちらへ近づいてきた。

「二人とも、僕が思った以上にやるね。でもまあ、卑怯な道真君の事だ。これから何か仕掛ける気なのだろう?」

 相変わらずの態度に、ともえは道真の様子を伺う。
 こちらも相変わらずの表情で呆れたように首を傾げて言った。

「俺がいつ、卑怯な真似をした?」
「忘れたとは言わせないよ。あの時、君がさも酷い怪我をしているように見せかけて僕の同情を誘い、矢を乱れさせたじゃないか。そして今度はそちらの彼女が怪我をして我々を動揺させようとしている……こんな卑怯な手があるかい?」

 以前道真が怪我をしたと言っていたが、それは今のように笠原道場との試合の時だったのだ。ともえは思わず自分の足を後ろへ隠す。

「俺の怪我に勝手に同情して矢が乱れたのだとしても、それは俺には関係ないことだ。それに怪我をしていた時だけじゃなく、お前は俺に勝った事なんか一度もないだろ?」
「なっ! 何を言うんだ! 今まではたまたま調子が悪かっただけだ! 今日こそ決着をつけてやる、覚悟していたまえ!」

 顔を紅潮させ道真に言葉をぶつけると、氷江はともえを睨んで橘達の元へと戻って行った。

「気にするなよ。あいつ、俺の事を勝手に敵視してるんだ」

 そりゃあ、一度も勝った事ないなら、ムキにもなるわよね……
 飄々とした道真は、氷江にとってはまるで暖簾のように感じるのだろう。押しても押しても手応えがないくせに、勝負に勝つ事が出来ない。そのもどかしさがこうした言動に現れるのだろうと、ともえは理解した。

「お前の足の怪我はお前の所為じゃない。それにさっきもあいつに言ったが、相手が怪我をしているからといってそれに心を乱されているようでは、いつまでたっても上達なんかしない。俺の所にわざわざ厭味を言いに来たあいつは、駄目だ」