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はなもあらしも 道真編

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 美弦の視線の先を追うと、真弓が廊下の向こうからこちらへと向かって来ているところだった。慌ててともえと美琴も立ちあがる。

「おや、みんなでお昼かい?」
「はいっ! 良かったら真弓兄さまもご一緒にどうですか?」
「美琴ちゃんの手料理は是非とも頂きたいんだけどね、僕はこれから大学の方へ行かなければならないから」
「えーっ!? 真弓さんって大学生だったんですか!?」

 驚いて道真を見ると、澄ました顔で黙々と料理を食べ続けている。

「ともえさんは来たばかりだから、知らなくてもおかしくないですよ」

 そう言って美弦は真弓の荷物を持った。

「玄関まで見送ります!」
「ありがとう、美弦。そういうわけで、僕は出かけてくるから。美琴ちゃん、また今度ご一緒させてもらってもいいかな?」
「あっ、はい! もちろんです……!」

 そう言うと美琴は小さく頷いた。その様子をちらりとともえが伺うと、美琴の頬が朱色に染まっている事に気が付いた。
 美琴は真弓を好いている――――直観的にそう感じると、ともえは美琴の助けになりたい、と純粋に思った。

「ぜひご一緒して下さい! 私もう美琴ちゃんの料理の大ファンになっちゃいました!」
「ははは、本当にともえちゃんは元気だね。道真、しっかりともえちゃんと稽古に励むんだよ」
「分かってるよ」

 そう言って微笑むと、真弓と美弦は正門へと向かって行った。

「美弦って、真弓さんを随分慕っているのね」
「ええ、真弓さんは年上で優しい方だもの」

 美琴はまるで自分の思いを話すように嬉しそうに言った。それを見てともえも微笑む。

「本当、真弓さんって優しいよね! ……誰かさんとは大違い」
「―――美琴、飯美味かった。おい、さっさと道場に戻るぞ」
 食べ終えて立ち上がると振り向きもせずに道場へと戻る道真を、ともえは慌てて追いかける。

「え? ちょっと待ってよ! 美琴ちゃん、本当に美味しかった! ご馳走さまでした!」
「ともえちゃん、練習頑張ってね!」

 声援に答えるように大きく手を振り、道真の背中へ向かって走った。
 自分も少しは料理の勉強をしようか。
 そんな事を考えながら。