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家族と性格

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 この物語はフィクションであり、登場する人物、団体、場面、設定等はすべて作者の創作であります。似たような事件や事例もあるかも知れませんが、あくまでフィクションであります。それに対して書かれた意見は作者の個人的な意見であり、一般的な意見と一致しないかも知れないことを記します。また専門知識等はネットにて情報を検索いたしております。ご了承願います。

                父とのわだかまり

「子供だから、親と性格も考え方も似ている」
 あるいは、
「子供だから、親の言いたいことはすべて分かる」
 などというのは、親の側から見た勝手な思い込みだ。
 それは逆も言えることで、子供が親に対して似ていると思うことは当然のことであり、そうでなければ疑問を抱くのもごく自然だと言えるのではないだろうか。
 ここに一人の少年がいる。少年の名前は真崎恭一。現在は十八になっているのだが、当時はまだ十歳にも満たなかった。小学生で言えば低学年。モノの道理など、理解できる年齢でもなかっただろう。
 家族は父と母の三人暮らし。本当は妹か弟が欲しかったのだが、両親が作らなかったという話をもっと後になって聞いた。なぜ作らなかったのか、理由はその後のことを考えれば分かるような気がしたが、その頃は両親と自分だけというのは、いささか寂しい気がしていた。
 その頃まで父は結構社交的な性格だったのか、会社の人を仕事が終わってから家に招くこともしばしばあった。その都度母親がいろいろせかせかと用意して、もてなしていたようだが、子供の恭一には、それが普通の過程の風景であり。別に特別なことでも何でもないと思っていた。
 やってくるお客さんに変な人はおらず、いつも手土産を持ってくるような人が多く、一度だけではなく何度も来訪する人もいたということは後から思うと、父親はそれなりに会社の人から信頼される人だったということであろう。
 ただ、一つ嫌だったのは、父を含めて来客者のほとんどはタバコを吸うということだった。すでにこの頃には電車の中など全面禁煙が施行されていて、世間では、
「タバコを吸うのは罪悪だ」
 という風潮も出来上がっていた。
 それでも応接室では結構タバコの臭いが充満することが多く、お客さんが帰った後も、応接室に入るのを嫌だったことがあった。
 しかし、恭一がタバコの煙を毛嫌いするようになったのはいつからのことだろう。生まれてからすぐの頃は、父親のタバコの臭いが嫌だったわけではない。むしろ、タバコの臭いこそ、父親の臭いとでもいうべきで、懐かしさのようなものがあったはずなのに、やはり人数で吸っているというイメージを頭に抱いたことが大きな原因だったのではないだろうか。
 母親は献身的にお客さんに尽くしていた。タバコ以外では別に恭一も嫌な感じはなく、むしろお土産まで持ってきてくれるのは、願ったりだったくらいだ。
 だが、母親はいつも無口で何も語ろうとしない。いつも父親の背中に隠れて、その姿を表に出そうとしていないかのようだった。だから、恭一は母親から叱られたという意識はない。
「昨日、お母さんに叱られてさ」
 と学校で同級生がそう言って話すのを聞いて、違和感を抱くくらいにまで母親が子供を叱るというシーンを思い浮かべることができないほどの違和感だったのだ。
 父親も恭一を叱ろうとしない。父親の場合は、
「子供の教育は母親に任せておけばいい」
 というタイプの人だったのだろう。
 どこか考え方に古臭さがあり、そこが厳格に見えるところなのかも知れないが、古臭い性格を容認できないわけではなかった。
 ただ、両親ともに子供に対しての関心がまったくないように感じ始めたのは、ちょうど自分が十歳の誕生日を迎えたことくらいからではなかっただろうか。
 その頃になると、それまで頻繁に連れてきていた会社の人を連れてくることはなくなった。
 おまけにあれだけ吸っていたタバコもやめたようで、気が付けば応接室から灰皿が消えていた。
 応接室だけではない。家のどこを探しても灰皿が消えていたのだ。
「お父さん、タバコやめたらしいわよ」
 と、ボソッと母親が呟くように言っていたのが印象的だった。
 めったに聞いたことのない母親の声を改めて聞くと、
――こんな声だったんだ――
 といまさらながらに感じてしまったことに、情けなさを感じた恭一だった。
 いくら内向的な性格であまりしゃべらないとはいえ、さすがに声を聞いてビックリするくらいになっているなど信じられることではないが、それだけ自分に対して何もリアクションを示さなかったということであり、本当に関心がないのかということを裏付けされたような気がしたくらいだった。
 父親が家にお客さんを連れてこなくなってからというもの、少し父親に変化が訪れてきたように感じた。ただそれは変化が訪れたというわけではなく、元々の本性のようなものが現れたと考える方が自然なのかも知れない。
 中学生になる頃には少しずつ分かってきたが、小学生の頃には理屈すら分からない。もっとも理屈が分かってきたといっても、その考えに納得したわけではないので、大いに反発する材料になったわけだが、
――これも一種の反抗期なのだろうか?
 と思うと、反抗期という言葉も別に悪い意味ではないような気がしてきた。
 中学生になってからのことを思い出すと、父親が誰も連れてこなくなってからかなり経つ。その間に実は両親の離婚というのもあったのだが、恭一にはどこか他人事のように思え、その成り行きをじっと見守っていたが、自分の親権や養育は父親の方に行ってしまい、自分は父親と一緒に暮らさなければならなくなったことが不思議だった。
 考えてみれば、今までの家庭はほとんど父親が仕切ってきて、収入も父親だけで生活していたので、離婚してからの親権や養育は父親に任されるのは当然と言えば当然のことだった。
――あんな親父と一緒にいなければならないのは、息ができないくらいに苦しいことではないか――
 と思っていた。
 実際に性格の違いは、子供の頃に感じていたものよりも、成長するにしたがって、決定的に違っていることに気付いてきたからだ。
 だが、幸いなことに、父はあまり家にいることはなかった。仕事で忙しいということだったが、日曜日や祝日に家にいるくらいで、昼間恭一が出かけるくらいは別に何でもないことだった。
 だから、休みの日の昼間に恭一があまり家にいたことはない。
 そういう意味では。恭一と父親の二人暮らしなので、家に二人が揃うことはないので、必ず家は一人だけのものとなっていた。おかしな家庭なのかも知れないが、世の中にはいろいろな家庭があるので、それほど変わっているという感じもなかった。
 あれは、正月だっただろうか。父親は元旦からの三が日、家にいることになった。恭一は元旦、友達の家で集まって、正月は恒例になっている遊びに興じていたが、その日、友達皆で、主催者の友達の家に泊まろうということになった。
「じゃあ、皆それぞれのご家庭の許可を得てください」
 と言って、それぞれで家族に連絡を入れ、ほとんど皆快く了承してくれたというのだが、恭一だけはそうもいかなかった。
作品名:家族と性格 作家名:森本晃次