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はなもあらしも ~真弓編~

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 それからも一進一退の攻防は続き、なかなか決着がつかない。
 と、突然今まで何の迷いも無く的を射ていた次の射手である橘の弓が乱れ始めた。

 えっ? 何っ!?

 驚くともえは、真弓を見る。が、真弓は何事もなかったようにいつもの笑顔だった。

「ほら、集中」

 そう真弓に言われ、ともえは集中した。
 橘の様子がおかしい事は気になるが、他人の事を気にしている余裕などない。
 気持ちを切り替え床の感触をゆっくりと確かめ、ともえはいつも通り弓を構えた。
 そして次の矢も的中させた。
 よし、いい感触!
 会心の出来に心の中で喜ぶと、場内がざわめいた。

「そんな、まさか……」
「何かの間違いだ! きっと日輪の連中が何かやったに違いない!」
「貴様一体何をしたんだっ!?」

 振り返ると、笠原道場の門下生達が今にも真弓に掴み掛かりそうになっていた。

「どっ、どうしたんですかっ!?」

 慌ててともえが真弓に駆け寄ろうとしたその時だった。

「お前達いい加減にしないかっ!!」

 笠原限流の一喝に、一瞬で道場内は静まり返る。幸之助も立ち上がり、真弓と橘へ歩み寄った。

「真弓、お前は何か気付いているのか?」
「はい」

 幸之助に促され、真弓はおくびもせず昂然と答えた。

「先ほどの休憩時、橘さんがそちらの二人の門下生と何か話していました。その時に少し様子がおかしくなったように感じたので、顔色が優れないけど大丈夫? と、声を掛けただけです」
「―――え? それ、だけ?」

 ともえはきょとんと目を開けて真弓と橘を見る。橘はまだ顔を強ばらせている。

「雛菊、本当か?」

 限流に尋ねられ、橘は震えながら小さく頷いた。

「橘君、一体どういう事なんだっ!?」

 驚いているのは全員同じだが、納得出来ない氷江が橘に食って掛かる。

「那須さんの足をご覧ください」

 そう言って橘がともえの包帯の巻かれた足を指差す。全員がそれを同時に見た。