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湯けむりの幻

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「酔ってる?」
「ちょっぴりかなぁ」
「予約しているんだ。行こうよ」
「そっかそっかぁ 来たかぁ (笑) うん行こう!」
「おいおい大丈夫か?」
新一は、誘ってはみたものの チャコの体調も気に掛かった。
「ちゃんとエスコートしてよね」
「お任せを。温泉初級者のご指導 特別講師致します」
新一は、携帯電話で時間を確認すると、入浴予約時間まであとわずかだった。
仕度を整え、館内のゆっくりと観覧したり、暗くなった街の明かりや夜景を見ながら歩いた。

脱衣所。チャコの浴衣。伊達締めの帯。
解けば、チャコの素肌。想像(おも) っていたより白い肌に 新一は見惚れた。
新一も 手早く浴衣を脱ぐと「タオルなんて要らないな」とチャコの手を取り、湯船へと向かった。 手桶に湯を汲むと チャコの肩口から掛け流した。チャコの身体に湯が流れる。大きいとはいえない胸の膨らみだが 充分に山水画のように流れを描いた。
 
「はい」
ややぬめりのある岩底で足を滑らさないように 新一は湯舟の中からチャコを迎え入れた。
「どう? ちょっと熱い?」
「大丈夫。気持ちいいね。酔ってるのかなぁ。ふわふわ」
新一は、チャコの様子に悪さはできそうにないなと諦め、掬った湯を顔に当てた。

露天風呂は、夜の景色に溶け込み 自然の音が心も癒す。
まだ 寒さの残る夜の温泉は芯まで温めてくれる。時折、肌に当たる風も心地よく感じられた。その温度差が 湯気となって二人を包んでいた。

ほんの一瞬の出来事だった。
新一は、くらっと寝落ちした。
湯が顔に当たり、すぐに起きたのだが、どれくらい時間が経過したのか?と思うほど 湯気は立ち上り周りが霞んでいた。

作品名:湯けむりの幻 作家名:甜茶