#1 身勝手なコンピューター
睦美はしばらく耳を塞いだが、何も聞こえないと教授の次の指示が分からないと思い、耳から手を離した。しかし、暫く待っても飛鳥山教授の声は聞こえない。
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「先生?」
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「先生!?」
ガチャン! キキィーー!!
睦美はドアを開けた。彼女は左側のドアから現れた。しかし、飛鳥山の姿はどこにも見当たらない。足の悪い教授が素早く隠れたり、部屋を出たりすることは不可能だと思われた。
「せんせい~。椅子に座ってるんじゃなかったんですか~?」
「冗談はやめてくださ~い」
睦美はコンピューターのモニターに目をやった。
そこには、『左のドアの確率が100%です』と表示されている。
「予想的中させたのね」
(でも、先生はどうしちゃったのかしら、コンピューターに聞いてみよう)
『飛鳥山先生は、今どこに居る?』と入力してみた。
するとすぐにコンピューターは、モニター上に回答を表示した。
『飛鳥山教授は存在しません』
(・・・あ! 私が耳を塞いじゃったから、0%の確率が・・・)
終わり
作品名:#1 身勝手なコンピューター 作家名:亨利(ヘンリー)