やっぱり! ライダー!
だが怪力ならマッスルも負けていない、クルマを受け止めて逆に投げ返す。
すると偽マッスルも受け止めて投げ返す……まるでクルマのキャッチボール、双方ともいわば怪力ナンバーワンの誇りにかけてそれを止めようとはしない。
(負けたくない、負けたくないが……こんなことを繰り返していても埒が明かないな……)
マッスルはこの無意味な力比べを終わらせる術を考えていた。
「はっ!」
「はっ!」
「はっ!」
「はっ!」
レディ9と偽レディ9の闘いはスピード勝負、互いに目にもとまらぬ攻撃を繰り出すが速さなら互角、どちらも攻撃を当てられずにいる。
「土遁……はっ!」
レディ9は忍術を繰り出そうとするが、印を結ぶ間も与えては貰えない。
が……。
(偽者は忍術を繰り出そうとはしないわ……その間もないのは確かだけどそぶりもないって言うのは……)
「はぁっ!」
偽セイコが気功弾を放つ。
「はっ! きゃぁぁぁっ!」
本物のセイコが宙に五芒星を描いてはね返そうとするが、セイコはその『気』のシールごとはじき飛ばされてしまう。
「はぁっ! はぁっ! はぁっ!」
偽セイコは矢継ぎ早に気功弾をはねって来る、だがセイコも度重なる闘いの中、戦闘に参加は出来ないまでも敵の攻撃を見切って避けるスキルが身に付いて来ているのだ。
「やるわね、あなたの師匠はもしやドゥーマン?」
「よくわかったわね」
「わかるわよ、ショッカーに手を貸す陰陽師なんてあいつくらいだもの、もっとも本人は道力を失ってるはずだけどね」
「一旦はね、でも修行のやり方は知ってるのよ、今復活に向けて再修業中よ」
「それは耳寄りな情報ね」
「あ……いけない、口を滑らせたわ」
「それと、あなた気功弾の他には何も学んでないみたい」
「そ、それはどうかしら?」
「根が正直なのね、図星って顔に出てるわよ」
「うっさいわ! 技は一つきりでも磨き上げてあるのよ!」
確かにその通り、ワンパターンの攻撃だが威力は強い、セイコは身をかわしながら反撃の機会をうかがう……。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
それぞれ一筋縄では行かない相手と闘っているのだが、もっとも苦戦を強いられているのはライダーだった。
「ライダー・キッ……何っ?」
ライダーが空高く跳びあがりライダーキックを放とうとすると、偽ライダーもリアクションを取って跳びあがり、更に翅を使ってライダーより速く、高く飛び上がる。
「お返しだ! ライダー・キック!」
ライダーは翅を持たない、ジャンプの頂点に達すれば後は落下するだけ、偽ライダーはその落ちぎわを狙ってキックを放って来た、空中でキックを受ければアスファルトに叩きつけられるだけ、ライダーと言えども無傷で済むはずもない。
「くそっ」
ライダーは身をよじってギリギリのところで偽ライダーのキックをかわすと、空中前転で体制を整えて何とか着地した。
「くっ!」
そのライダーを更なる偽ライダーキックが襲う、ライダーはとっさに側転を決めてその攻撃を何とかかわした。
「ならば、これだ!」
ライダーは偽ライダーに駆け寄り、右ストレートパンチを放つ、しかし偽ライダーは左腕でそれを払いのけるとカウンターの右フックを打って来た、ライダーはそれをスウェーでかわしローキックを放つが偽ライダーもさるもの、さっと後ろに下がってローキックをかわす。
両者一瞬のにらみ合いの後、手四つに組む……が、体格に勝る偽ライダーがじりじりと押す。
「どうだ? ライダー、貴様と俺では格闘センスとスピードは互角、パワーでは俺の方が一枚上手のようだな、そして決定的な差はこれだ!」
偽ライダーは手を振りほどいてジャンプし、更にはばたいて空高く舞い上がった。
「ライダー! 貴様のキックは落下するだけだが、俺は更に落下スピードを上げることが出来る、しかも空中での方向転換も自在なのだ!」
ライダーよりはるかに高い到達点、そしてそこからはばたきながら加速してのパンチを繰り出して来る。
「くっ!」
身をよじってかろうじて直撃を避けたライダーだが、かすっただけでも吹っ飛ばされるほどの威力がある。
(直撃されたらひとたまりもないな)
反撃どころか、ライダーは何度も繰り出されて来るパンチから逃れるだけで精一杯だ。
だが、押されっぱなしのようでいてもライダーは反撃するタイミングを計っていた、避け続けるだけではいずれはやられてしまう、ここは捨て身の戦法を取る他はないと。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「追い詰めたぞ、食らえっ……何?」
ライダーマンをビルの入隅に追い詰めた偽ライダーマンはロケット弾を発射しようとするが……。
「残念、弾切れのようだな、あれだけ派手にぶっ放していれば当然だよ」
「くそっ」
偽ライダーマンはアタッチメントを交換しようとするが、その隙を逃がすようなライダーマンではない。
「ぐわっ!」
ライダーマンが発射したロープフック、その先端についている鋼鉄の鉤がマスクに覆われていない顎に命中したのだ。
「そこで大人しくしていてもらおうか」
ライダーマンは偽ライダーマンをロープでぐるぐる巻きにした。
「逃げるのか! マッスル」
「逃げる? この俺が? そんな訳はないだろう? 無意味な力比べをやめるだけさ」
飛んでくる車に背を向けて走り出したマッスル、その視線の先には……ショップ店員が高所から荷物を降ろすのにでも使ったのだろうか、一脚だけぽつんと取り残されているような折りたたみパイプ椅子がクロームメッキを光らせている。
「しまった!」
マッスルが折りたたみパイプ椅子を自在に操るのを知っているのだろう、偽マッスルはすぐに後を追ってきて、オープンカフェのテーブルを投げつけて来た。
「おっと、そう来るのはお見通しだぜ」
マッスルはテーブルの下をかいくぐると、パイプ椅子の角を偽マッスルのみぞおちにめり込ませた。
「う……うううう……」
「ちょっと顔を見せてもらうぜ……やっぱりお前か」
マスクを取り去ると、かつて格闘指導をしたことがある後輩の顔が現れた。
「元々パワーじゃ俺に引けを取らなかったお前だが、俺よりもパワーがあったな、プチ改造か?」
「プチ・プチ改造だ……」
「なんだ? そりゃ」
プチ改造とは死神博士が開発した筋力増強薬、マッスルもショッカー時代にそのプチ改造を受けた、だが、その薬には恐ろしい副作用があり、マッスルは丈二が作ってくれた薬を注射してもらうことで事なきを得たのだが……。
「死神博士が新しく開発した薬……」
「おいおい、プチ改造薬でも俺は死にかけたんだぜ、死神は何と言ってた?」
「この薬には副作用はない……と」
「お前はそれを信じるのか?」
「……」
偽マッスルは力なくかぶりを振った。
「寝ている間に注射されたんだ……」
「そんなことだろうと思ったぜ、目を覚ましてショッカーから抜けるんだな……まあ、この場は大人しくしていてもらうがな」
作品名:やっぱり! ライダー! 作家名:ST