やっぱり! ライダー!
「あ! あそこを見ろ! ライダーたちだ! ライダーチームがいるぞ!」
突然繁華街に現れたライダーチーム、人々はヒーローを目撃して歓声を上げる……だが様子がおかしい、違和感があるのだ。
「あっ! 何をするんだ! マッスル!」
仮面ライダーマッスルは怪力で知られる、その怪力に物を言わせて停車中のクルマを頭上高く差し上げて宝飾店のショーウィンドウに投げつけた。
大きな音を立てて砕け散るガラス、店の中を転がるクルマ、逃げ惑う店員や客が逃げ惑う中、ライダーたちは悠々と店に侵入して宝石類を袋に詰め込んで行く。
警官隊がパトカーのサイレンを鳴らしながら駆け付けるが、進み出たアベノセイコが気功弾を放つと吹き飛ばされてしまった。
人々が唖然として見守る中、ライダーチームはそれぞれのマシンに跨った。
「ちがう! ちがうぞ!」
民衆の中から声が上がった。
「偽者だ! あの背中を見ろ!」
仮面ライダーの背中には翅の痕跡と思われる模様がある、だが、宝飾店を襲ったライダーには実体としての翅が生えている。
「ふん、気づいたか、まあ良い……行くぞ」
偽ライダーの号令の下、偽ライダーチームは爆音を残して走り去った。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「偽ライダーチームか……中々手が込んだことを……」
おやっさんが唸る。
「ニセモノだとわかっていても我々が手をこまねいているわけには行かない、ショッカーの仕業であることは明白だからな、それを見越した犯行だな」
実際、偽ライダーチームの面々はと言えば、赤いマフラーをした偽ライダー、黄色いマフラーで右腕にアタッチメントアームを備えた偽ライダーマン、緑のマフラーで堂々たる体躯の偽マッスル、水色のマフラーを巻き、白の忍び装束をまとった偽レディ9,そしてピンクのマフラーの偽アベノセイコと面子を揃えている、本物たちも自分の偽物が悪事を働くとなれば気が逸るのを押さえられない。
だが、丈二はやはり冷静だった。
「あの翅が気になる、群生相かも知れないな」
「なんだい? その群生相ってのは?」
マッスルの問いかけには隼人が代わって答えた。
「バッタは過密な生息状態に置かれると変異するんだ、それが群生相さ」
「普通のとどう違うんだ? ライダーもバッタのDNAを組み込まれてしまっているんだろう?」
「あ、そこなんだが……実は……」
隼人がちょっときまり悪そうにするのを見て、丈二が代わってマッスルの疑問に答えた。
「ライダーはバッタではなくてイナゴのDNAを持っているんだ」
「は?」
「え?」
「そうなの?」
メンバーたちの頭に「?」マークが浮かぶ。
「いや、俺もてっきりバッタだと思っていたんだが、丈二に調べてもらったらイナゴだったんだよ」
「イナゴとバッタって、どう違うんだ?」
マッスルがそう訊くと、志のぶと晴子も『うんうん』と頷く。
「かなり近い種類であることは間違いないな、イナゴとトノサマバッタはよく似ているし、喉元の突起ぐらいしか見分ける方法がない、だが決定的な違いは、バッタは群生相に変異するがイナゴはしないって所なんだ」
「変異するって、どう変わるんだ?」
「主に飛翔能力が上がるな、そして凶暴性も嵩じる、良くイナゴの大群と言うが……」
「ああ、空を真っ黒に染めるほどの大群が飛んできて、畑を食い荒らすってやつな……」
「あれは実は群生相に変異したバッタの大群だ、イナゴは米を食べるからそのイメージがあって間違って広まったんだろうな」
「そうだったのか、だとするとあの偽ライダーは……」
「ああ、おそらく飛べる、ジャンプじゃなくて背中の翅を使ってね」
「しかも凶暴ってことだな?」
「そうだ、そして、個体差はあるが一般的にトノサマバッタの方がイナゴより身体が大きい」
「だとすると、想像以上に強敵なのかも知れないな」
「だけどチームの中で改造人間はライダーだけよ、偽ライダーチームの他の4人は?」
「まあ、プチ改造と強化スーツのスーパー戦闘員であることは間違いないだろうな、だがそれだけとは限らない、偽マッスルが車を持ち上げる映像を見ただろう? スーパー戦闘員でも普通はあそこまでのパワーはない、特別に訓練されているか、あるいは改造されているかも知れない……」
チームの中に『これは一筋縄では行かないぞ』と言う空気が流れた、そして同時に『それでも負けるわけには行かないんだ』と言う強い気持ちも……。
その時、警察からの連絡が入った。
「偽ライダーがまた現れたらしい、新宿だ!」
「行こう!」
例え罠とわかっていても人々を守るために行かなくてはならない、それが正義の味方なのだ。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「わははは、やはりノコノコ現れたな、ライダーチームよ……ではこちらも仲間を呼ぶとしよう、出でよ! 仲間たち!」
ビルの陰から偽ライダーチームの面々が飛び出してきて偽ライダーの横に並び、それぞれにポーズを決めた。
「われら! ゴライダー!」
「ゴライダー?」
「まあ、5人だからゴライダーと……少し安易な気がしないでもないが……」
「いや、思いっきり安易じゃないのか? しかもゴレンジャーのパクリっぽいしな」
「まあ、そこは大した問題ではないとばかりに作者が手を抜いたのだろう」
「タイトルをつけるのも苦手のようだしな……そこは同意するよ」
ハックッション……。
「そこは置いておいて、われらは貴様らを抹殺するために編成されたチーム、能力も貴様らよりも上だぞ、そもそもライダー、貴様はプロトタイプのはずだったのだ、なのに散々世界征服の邪魔をしおって……しかし、あれから何体の怪人が造られたと思う? ショッカーのスキルは確実に上がっているのだ」
「いや……俺を改造した緑川博士に逃げられたのが原因だと思うが……」
「我々は貴様らに敵わないとでも? 論より証拠、勝負だ」
「ああ、望むところだ!」
5対5、しかもおのずと各々が向かうべき相手は決まっているようなものだ。
「私の右腕はショッカーから逃亡する際に失ったものだが、君の右腕はどうした?」
「それは……」
「アタッチメントアームを装着するために切り落とされたのか?」
「まあ、麻酔から覚めた時はショックだったが……」
「死神博士らしい身勝手なやり方だな」
「だが、おかげで、ライダーマン、貴様と対等以上に闘える力を手に入れたのだ!」
偽ライダーマンはその右腕からロケット弾を発射して来た。
ライダーマンはすんでのところで直撃を避けたが、背後のビルのコンクリート壁にそれは命中し、ライダーマンはコンクリートの破片入りの爆風を背中に受けて吹き飛ばされてしまった、強化スーツとヘルメットがなければ命もなかっただろう。
(奴のアームには破壊を旨とした武器が揃っているようだ……心してかからねば危ないな……)
ライダーマンは頭脳をフル回転させ始めた。
「これでも食らえ!」
「何の! 返してやるぜ!」
偽マッスルは怪力自慢、道端に停車中のクルマを頭上高く差し上げて投げつけて来る。
作品名:やっぱり! ライダー! 作家名:ST