やっぱり! ライダー!
マッスルがパイプ椅子を大上段に振りかぶって思い切り座面を頭に打ちつけると、座面は砕け、偽マッスルはパイプ椅子の首飾りをまとって昏倒した。
「はぁっ!」
「うっ」
身体能力は自分以上に鍛えられているものの忍術は使えないようだったが、装備は備えているようだ、偽レディ9は煙球を地面に叩きつけた。
「思う壺よ」
レディ9は自らも煙球を破裂させて煙を2倍に濃くした。
「えいっ! え? どこ? どこなの?」
「ここよ」
例え視覚を奪われてもレディ9には地獄耳がある、足音を察知して敵の位置や移動速度を知ることが出来るのだ。
煙の中、レディ9の位置にクナイを突き付けたつもりだったが、レディ9は偽レディ9の背後、クナイが首元に突き付けられている。
「畜生!」
「あらあら、女の子がそんな言葉を使うものじゃないわ」
ビシッ!
レディ9の手刀が首筋の延髄に直接衝撃を加えられるツボに正確に打ち下ろされると、偽レディ9はその場に崩れ落ちた。
「きゃぁっ!」
偽セイコの道力は気功弾に限られるようだが、威力はセイコが放つそれよりも強く五芒星の盾でも防ぎきれない、セイコは次第に追い詰められて行った。
そして急所は避けたものの肩に気功弾を受けてしまい、きりもみするように地面に倒れ込んで動かなくなってしまった。
「ふふふ、もう終わり? 体力がないのね、強い気は体力あってこそよ、もう少し体を鍛えておくべきだったわね……」
偽セイコが倒れているセイコに歩み寄って見下ろす……と。
「これで勝ったつもり?」
セイコが不敵な笑みを浮かべながら見上げて来る。
「あら、負け惜しみ? いいわ、もっと聞かせて、ぞくぞくしちゃう」
「負け惜しみかどうかは自分の足元を見てから判断して欲しいわ」
「え? あああああ……ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
偽セイコの足元には無数のゴキブリ、セイコは一匹のゴキブリを見つけ、その近くに倒れ込んで密かに呪をかけて式神としていたのだ、ゴキブリの大群はその式神が呼び寄せたものだ。
「いやぁぁぁぁ! 這い上がって来ないで! きゃぁぁぁぁ! スーツの中にもぐりこんで来たわ、背中を這いまわってる! いやぁぁぁぁ!」
じたばたしたくらいでゴキブリを振り払うことはできない、次々と集まって来たゴキブリにたかられて真っ黒になった時、偽セイコは泡を吹いて卒倒した。
「まあ、気絶するのも無理ないけどね……ご苦労さま、もう戻って良いわよ」
セイコが式神にしたゴキブリから呪を解くと、ゴキブリの大群は元いたところへと戻って行った……主にあまり衛生的とは言えない飲食店の厨房に……。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「「「「ライダー!」」」」
それぞれの敵を倒してライダーの下へ仲間が集まって来た時、ライダーは遥か上空にいた。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「何ッ?」
「このタイミングを計っていたのさ」
偽ライダーの急降下パンチにピンチに陥っているように見えたライダーだが、スピードに慣れ、動きを見極めてパンチを紙一重でかわしながら偽ライダーの脚にしがみついたのだ。
「は、離せ」
掴まれていない方の脚でライダーの頭を踏みつけるがライダーはひるまない。
「ならばこうだ!」
偽ライダーは急降下の体勢に入った、地面すれすれに飛んで脚を振り、ライダーを地面に叩きつけようと言うのだ。
「これを待ってたぜ」
「何ッ?」
ライダーは空中で身体を振って回転し、偽ライダーの背中に回って翅を封じた。
「やめろ! 離せ! 地面にぶつかる!」
「離せと言われてその通りにすると思うか?」
「このスピードで地面に叩きつけられたら貴様もただでは済まんぞ!」
「覚悟の上だ」
「なぜ離れない! 今離せば貴様なら何とか着地できるはずだぞ」
「この闘いがふりだしに戻るのは御免なんでね」
「なぜそこまで……」
「俺には守るべきものがあるからさ」
「聞いたような口を……ならば……こうだ!」
偽ライダーは身体をひねり、ライダーを下にする。
「これも読んでいたさ」
地面に叩きつけられる瞬間、ライダーは偽ライダーを抱えたまま思い切り身体を反らした、マッスルから伝授されたプロレス技の一つ、ジャーマン・スープレックスだ!
「ぎゃっ!!!!」
地面との衝突の威力で偽ライダーは頭をアスファルトにめり込ませ、身体を硬直させたかと思うと崩れ落ちた。
「ライダー! 大丈夫か?」
「無茶しやがって!」
「危なかったわ」
「無事なのよね?」
倒れ込んでいるライダーに仲間が駆け寄ると、ライダーは何とか上体を起こした。
「さすがに……効いたよ」
「あのスピードで良く無事でいられたな」
「ああ……ジャーマン・スープレックスからは受け身もままならないからな……ちょっと身体が動かない……」
「腰を強く打ちつけたせいだ……しばらくは痺れて歩けないだろうな……」
「ライダー、肩を貸すぜ」
「ありがとう、マッスル……」
マッスルの肩につかまって立ち上がったライダー。
固唾を飲んで闘いの行方を見守っていた群衆がわっと歓声を上げた。
「やっぱりライダーだ!」
「さすがだよ! ライダー!」
「ありがとう! ライダー!」
ライダーは軽く手を挙げて歓声に応えた…………。
「なかなかの強敵だったな、ゴライダー」
「ああ、ショッカーの科学力もじわじわと上がってきているみたいだ、厳しい闘いが続きそうだな」
「そうだな、しかし負けるわけにはいかないんだ……そうだろう? マッスル」
「ああ、あの歓声に応えるためにもな……俺たちは負けないさ、負けるはずがない」
「そうだな……俺たちには守るべき人々がいるんだ」
「そうとも、守るべきものがある時、人は強くなれるものだからな」
「背中に人々の力を受けて俺たちは闘っているんだからな……負けないさ」
ライダーはそう言うと夕日に向かって顔を上げた……。
作品名:やっぱり! ライダー! 作家名:ST