ふたりでひとり
そこには、聖子の風俗における男性に対しての人間観察、それが加筆することで覚醒した才能。さらには原案を描くために培われた中西の才能。それぞれが相乗効果をもたらし、新たな分野ともいえるジャンルを覚醒させたという評価がもっぱらである。
「人間なんて、どこでどうなるか、真剣に生きていれば、他の人に見えないことが見えてくるのかも知れない」
という聖子に対し、
「いや、いいパートナーに恵まれるのも一つの才能であり、ただそれでも自分だけが新しいものを作り出すという矛盾した考えをいつまでも持ち続けるのが大切だということなのかも知れない」
と中西が、いわゆる加筆修正を行った。
「才能っていったい何なのだろうか?」
二人はそれぞれ声に出さずに、そう呟いていた……。
( 完 )
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