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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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「さよならを言うために」1~5話

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彼女はそのまま煙草に火を点け、それからメロンクリームソーダに乗ったアイスを食べ始めた。その毒々しいような光景に僕はちょっと目を逸らしたけど、すぐに彼女に目を戻した。彼女がアイスを頬張る様子は、またとても幼い笑顔になっていた。

「飲まないの?珈琲」

そう聞かれてはっと気づいた。僕は彼女に見惚れて、手元にある珈琲を忘れていたのだ。なんということだ。四十三歳が十四歳に一時でも夢中になるなんて。僕はあまり慌てていることを悟られないように、「飲むよ」とゆっくり言って、カップを持ち上げた。

それから彼女はあっという間にメロンクリームソーダを平らげて、「おなかすかない?かな?」と、どこか自信なさげにこちらを上目がちに見てきた。それは友達に対してこのあとの予定を相談するみたいで、僕は一体彼女にどう見られているのか、すっかりわからなくなってしまった。

「そうだね、いい時間だ。でも、もう家に帰る時間じゃない?十四歳」

「名前みたいに十四歳十四歳って言わないで。いいじゃん別に。おなかすいた!」

「わかったわかった。まいったな。美味しい店を知ってる。そこに行こう」

「やった!」

彼女は両手をぱちんと叩いて、嬉しそうに笑った。“目の前一面に花びらが舞うのを見たようだ。”僕はそう感じたけど、とても困っていた。初対面の十四歳にあっという間になつかれてしまったからだ。こんな子を放っておいたら、この先何に巻き込まれるかわからない。それに、この子の親は心配しないんだろうか?