狐鬼 第一章
青天眩しい、夏の日
地元最寄り駅、新幹線乗降場に立つ彼女の姿があった
大き目の肩掛け鞄の中、手拭いを取り出し額の汗を拭う
今日も一日、熱くなりそうだ
反対の肩に提げる、犬用旅行鞄
一時、開け広げた上部部分から弾む吐息が漏れてくる
「いい子いい子」
気休めだが手で扇ぐ
人間でも茹だるような暑さだ
毛深い彼等にとっては可也、過酷だろうに
そうして見回す、歩廊内
姿を見せない白狐に一抹の不安を感じるが仕方ない
しゃこに見付かれば一気に修羅場だ
だが、そろそろと思うや否や
「待たせたな!」と、言わんばかりに新幹線が歩廊に馳せ参じる
手回り料金、一個二百九十円
愛犬「しゃこ」は人生初の新幹線にいざ、乗り込む(笑)