狐鬼 第一章
丸で月を挟むように向かい合う、二つの影
地上に残された足手纏いの自分は
其の光景を見上げるも如何にもこうにも切なくなる
愛する巫女を救う為
愛する巫女と戦うしかないのか
そんな事が罷り通っていいのだろうか
何とかならないのか
何とか打開策を、と思うも閃く訳もない
「すごーい!、わんちゃん!!」
突如、背後から幼女の笑い声が上がる
弾かれたように振り返る彼女が寝間着姿で燥ぐ幼女を見詰めた
つくづく馬鹿だ
止せばいいのに
怖い反面、興味本位で覗いて見たくなる
「人間にもなれるなんて!」
楽しげに両手を打ち鳴らす
幼女から目を逸らす事も出来ずに後退りし始める
瞬間、幼女が其の顔を向ける
「お前は邪魔なの!」
既に其の場から駆け出していた
彼女は肋骨の痛みで早くは走れないが元元、「もも神」だ
如何足掻いたって追い付かれる
何処かに隠れるんだ
背後で上機嫌で笑い出す幼女の声が病棟の壁に反響する
「 きゃはは きゃははは はははは! 」