狐鬼 第一章
戻る道も
進む道も分からず彷徨う魂
生と死の狭間
此の場所には数多くの魂が囚われている
中庭の、芝生の上を飽きもせず跳ね回る幼女も其の一つなのだろう
不意に顔面に覆い被さる幼女を乗せたまま
頭上の月目掛け跳ね上がる
幼女の歓声に白狐は遥か昔の出来事を思い出す
幼稚故、純粋な魂
幼稚故、不純な魂
全ては自分の無邪気さ故、台無しにした
幼稚故、澄む魂
幼稚故、濁る魂
全ては表裏一体
幼女を見詰める白狐の翡翠色の眼が揺れる
今ならば可能
其の魂を導く事は今ならば可能だ
巫女が動けない以上
巫女が追えない以上
日がな一日
此処を徘徊する以外、他に遣る事等ない
此れも何かの縁なのだろう