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狐鬼 第一章

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なんか、まぶしいなあ

瞼越しに射す、光を避けようと寝返りを打つも
時既に遅しとばかりに彼女の脳は起床の指令を出し続ける

や、ねてる

掴んだ毛布を頭迄、引き上げる

もっと、くらいところで
もっと、ふかいところで

なにもしらずに
なにもかんがえずに

ねむっていたい

そう思えば思う程、彼女の意識は鮮明になる

やめて、おきたくない

挙句、其の耳に蝉時雨が鳴り響く

おきたくないんだって、ば!

必死の抵抗で腕を振り回した勢いで毛布が開(はだ)ける
見開いた彼女の目が天井、板の木目と搗ち合う

子どもの頃、其の顔に見える木目が怖くて
日本家屋の祖父母の家にお泊りするのが苦手だった

真夜中に目を覚ます恐怖
御手洗を我慢する、其の感覚を久し振りに思い出す

息苦しさに思わず、深呼吸する

駄目だ
横になったままより、起き上がった方が楽そうだ
思い、何とか上半身を起こす

気怠い頭を垂れる彼女が
ふと傍らに転がった手拭いに気付き、手に取る

見遣れば枕元には水を張った洗面器があった
陽の光に水面がゆるりと、煌く

手拭いを入れる序でに自分の手ごと浸す
温くも、触れる心地良い感覚に思わず溜息を吐く

何というか、擬似感は否めないが
当然ながら此処は彼の、屋敷の離れ屋じゃない

開け放たれた障子の向こう
小じんまりと臨む日本庭園を何とはなしに眺めた

真夏の陽射しに色濃く映える、木木の緑
雨音にも似た、忙しない程の蝉達の鳴き声
そうして底抜けの真っ青な空に描く、真っ白な入道雲

「夢なら良いのに」

呟く彼女が濡れた手の平で額を拭う

此処は彼の、屋敷の離れ屋で

「全部、嘘だった」

目を覚ました自分に
やんちゃそうな笑顔で笑う彼が、そう言うんだ

「そんな都合の良い夢なら良いのに、な」

引き寄せる膝の上に顔を埋める
其の肩が小刻みに震え、微かな嗚咽が漏れる

実際は唯の、闇

否定も
肯定も

何もない唯の闇の中を力無く、彷徨っていただけ

握り締める毛布で瞼を押さえる
彼女の耳に蝉時雨に雑じり、足音が聞こえてくる

何故、気が付いたのかは分からないが
気が付いた以上、身を隠す場所を探すも立ち上がれない

抑、そんな事する必要があるのか

枕元の洗面器に目を遣る、彼女は思う

そうして外縁を進む
段段、此の部屋に近付いてくる足音に耳を澄ます
彼女が咄嗟に身構える

作品名:狐鬼 第一章 作家名:七星瓢虫