狐鬼 第一章
幾つもの木木が犠牲になっては倒れ、轟く
其の地響きが、すずめの足元を襲う
「な、?!」
如何にもこうにも立っていられず
旅行用鞄を手放すと、頭部を抱え込み其の場に蹲る
朱い鳥居を潜り、祭り会場に足を踏み入れた瞬間の出来事だ
「ななな、なに?!」
声を上げた途端
舞台の裏側、生い茂る森の方から眩いばかりの光が見えた
尚も止まない振動の中、如何にか立ち上がる
光の方に行ってみよう
突如、思い至り板塀に囲まれた境内、森への道程を探す
徐徐に収まる、地面をゆっくり踏み締め舞台に近付く
目隠しの白い布は引き裂かれ、剥き出しになった通路が窺える
舞台裏の通路からなら近いし、分かり易い
思うも何故か彼女は舞台に上がる事を躊躇する
此処に入ってはいけない
自分以外の誰かが、そう忠告する
自分以外?
馬鹿馬鹿しい、そんな事有り得ない
結局、舞台横に板塀扉が在る事に気付いた彼女は
同じく板で出来た取っ手に手を掛け、開けると森の方角へと走り出す