狐鬼 第一章
朝焼けを映す
内縁を仕切る障子を眺めつつ彼女は瞼を擦る
結局、一睡も出来ずにいた
「拒絶」
何気無く頭に浮かぶ言葉に彼女は顔を歪める
不意にこつんこつん、と掃き出し窓を叩く音がした
素早く反応する彼女が手前の障子を勢い良く、引く
掃き出し窓の向こう
硝子越しに彼の姿があった
「お早う、すずめ」
目が合う彼が微笑み、手を振る
其の優しい面差しに彼女は思わず、涙を零す
「すずめ?」
突然の彼女の涙に戸惑い、彼は窓を開ける
元元、鍵は掛けてはいない
「如何したの?」
「僕、脅かしちゃった?」
彼の言葉に
そうではない、と彼女は頭を振った
きっと、たかは悪くない
すずめは頬を伝う涙を拭いながら、答える
「此処にいるのが辛いの」