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狐鬼 第一章

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巫女の姿を間近で拝もうと人人の波が畝る
下手すれば将棋倒しし兼ねない恐怖に彼女は彼の肩に身を寄せる

彼も彼で彼女を庇うように
角灯を持つ手を翳し人波を遮った途端、其の波が凪ぐ

見れば、舞台に佇む巫女が其の場に座している
其の姿に人人は固唾を呑む

「来る」

何故か彼女は、そう思う
何が来るのか分からないが、そう感じた

すずめの、其の呟きを聞いた彼は目を見張るが
直ぐに舞台上の巫女に目線を戻す

刹那、舞台四隅に置かれた篝火台に月白色の炎を出現する

「狐火だ」

誰かが言った
其れは彼の声だったのかも知れない

分からない程、彼女の意識は篝火台に釘付けだった
燃え盛る狐火は鮮やかに其の色を変えながら周囲を照らす

気付けば人人が提げる、手燭灯にも
彼が翳す角灯にも狐火が灯る

幾色にも揺れ動く、狐火を誰も彼もが見入っていた
故に舞台中央に座した巫女の背後にも出現した、其れ
人人が、其れの存在に気付くのに本の少し時間が掛かった

其れは

月白色の狐火を自らの身に纏い
幾つにも分かれ伸びる尻尾を主人である、巫女の周囲に張り巡らせる

伸びた髭を震わせ、翡翠色の眼で人人を睨め付けては
深く裂ける口元を歪め鋭く尖る牙を剥く

其の姿は正しく、白狐

毎度の事ながら人人は白狐の出現を見逃す
手燭灯に灯る狐火に誑かされるのかは知らないが結果、見逃す

そんな人人の落胆を余所に
彼女は神狐様の姿を目の当たりにして当然の如く、固まる

作品名:狐鬼 第一章 作家名:七星瓢虫