狐鬼 第一章
白衣に緋袴姿の、お河童頭の童子が二人
舞台正面、白い布が左右に開き奥に続く通路から現れる
誰の目にも童子に見えるが実の所は分からない
身長百五十糎にも満たない二人は、白い狐面を付けている
手にする神楽鈴を奏で続ける、其の姿は不気味だ
軈て、風に流れる夜雲が満月を覆う、闇の中
神楽鈴の音だけが響く
シャンシャンシャン シャンシャンシャン
律動を刻む、音
シャンシャンシャン
再び、月明かりが舞台上を射した瞬間、神楽鈴の音が止んだ
誰も彼もが見詰める舞台中央、二人の童子の姿はなく
代わりに千早を羽織る少女が一人、佇んでいる
青白い満月の光を浴びて
青褪める顔を人人に向ける其の姿に、彼女の傍らに立つ彼が呟く
「神狐を統べる、巫女だ」