狐鬼 第一章
26
勝利者と敗北者
人生は勝つか負けるか
其の為の努力は惜しまない
勉強も運動も自分の出来る精一杯の事をしてきた
運が良い事に
自分は外見にも家族にも恵まれている
行き着く先は羨望と嫉妬
自分にとっては何方も此の身に心地良い
憧れない人間等
嫉まない人間等、いる訳がない
どうぞ、お好きなだけ注目してくれて構わない
「花」精神?
「花」組織委員会?
「美しい花は手折る事無く、皆で愛でよ」?
笑わせないで
手を伸ばす勇気も
手を触れる勇気もない連中に指図される謂れはない
此処は自分の道だ
此処は自分だけの道だ
其の道で我が物顔で立ち塞がる奴は誰だろうと容赦しない
他人の人生を邪魔するなら
自分の人生を捨てる覚悟をしろ
そうやって生きてきた
そうやって生きてきた結果、疲れたみたい
如何やら自分は根っからの、戦士じゃなかったみたい
此の身を固める鎧を脱ぎ捨てて
此の手に握り締める剣を放り捨てて
一本道の途中
見付けた彼女は自分にはない、「何か」を呉れる
傷付き、戦い疲れた
自分に寄り添い、決して裏切る事等ない
だから自分は又、戦える
後ろで控える彼女が
後ろで支える彼女が見守っていてくれるから
そう思っていた
「そう思っていた?」
違うでしょう?
毒にも
薬にもなりゃあしない
見下していた
本音を言えば、そうだ
友達の振りをして
友達の振りをしていただけ
本音は、そうでしょう?
抑、友達なんて必要ない
負けたら意味がない
勝たなければ意味がない
此の道を汚す奴等は許さない
此の道を犯す奴等は許さない
そうして順風満帆に歩んできた、一本道
其の道の、片隅に転がっていた小石を拾い上げたのが運の尽き
其れが、すずめだ