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狐鬼 第一章

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一面鏡台に映り込む、蒼褪めた其の顔は
昼間の出来事を思い出しては不快感露に眉根を顰める

額に第三の眼を持つ、鬼

何処かで見た?
否、何処かで聞いた?

遡るも曖昧模糊の記憶では埒が明かない

少女は腰迄ある黒紅色の髪を梳く
黄楊櫛を置くと、側の白い結い紐を手に取る

刹那、憎悪溢れる眼差しで其れ等を見詰めた

紐に群がる異形な輩共

何処から這い出て来るのか
此の世界はどれ程、無防備なのか、と思う

蜘蛛のようで蜘蛛ではない
どす黒い鬼の顔を持つ鬼蜘蛛共は紐を伝い、少女の指へと絡み付く

「満ちた途端に此れ」

吐き捨てる少女に鬼蜘蛛共が甲高い声でキイキイ、鳴き始める

「喧しい」

鬼蜘蛛共共、其の手の平を握り締める
消え入る鳴き声を残し、異形な輩共は黒煙になり消滅する

少女の口元が笑みで歪んだ、其の瞬間

「 威勢の良い 」

「 威勢の良い巫女だ 」

耳障りな程、嗄れた低い声が耳元で響く
身構える少女が素早く、鏡越しの背後に目を走らせる

微動だにせず食い入る一面鏡の中を黒い影が横切った

鏡台に両手を掛ける

「小賢しい真似を!」

立ち上がる少女が力の限りに薙ぎ倒す
けたたましい音を立てて辺り一面に、其の破片が飛び散る

作品名:狐鬼 第一章 作家名:七星瓢虫