狐鬼 第一章
しゃこの誘いを無下に断わった事に
多少、心を痛めながらも白狐は日課である、屋根の上で過ごす
其処で延延と見渡す景色を前に酷く慕わしい、朱い鳥居が見える
そして
物理的には近い
心理的には遠い、学校方面を見るともなく眺めた
今も聞こうと思えば彼女の声は聞こえてくる
望むも
望むまいも其れが巫女と神狐の絆だ
(お土産、コンビニスイーツでもいいかなあ?)
哀愁を帯びた
背中を丸めていた白狐の、翡翠色の眼がかっと見開く
「こんび?に、すいーつ?」
屋根の上、無気力に垂れていた
幾つにも分かれ伸びる尻尾が、ぴょこぴょこ跳ね出すも
相変わらず其の横顔は苦虫を嚙み潰したような表情だった
不本意ながら
家の中から自分を遊びに誘う、しゃこの声も聞こえてくる