おーまいごっど「ビンタの悪霊」
ぎゃーぎゃーと喚く二人を前に、そやつはふっと思い留まったかのように、つぶらな両目で自分の頭に視線を向けおった。そうじゃそうじゃ。頭に載った烏帽子が気になったようじゃ。その烏帽子を脱いで、杓でできたネクタイに二度擦り付け、それを黒い山高帽に変えて、深く被りおったわい。しかし、しっくり来んかったのか、つばを待ち上げて額を出して、浅く被り直しおった。そうじゃの。こやつにはこの方がお似合いじゃ。
「本当に魔法が使えんの?」
セコビッチが恐るおそる聞いた。
「魔法? 違いますよ。そんな迷信、信じてるんですか」
「だって、今、いろいろと・・・」
「これはただの神力です。魔法使いなんかいません」
「はあ? 違いあるのか?」
「じゃ、お願いを聞いてくれるんですね!」
「そのために現れましたのです!」
「でも、神様って目に見えるものだったの?」
「今日は特別です。初日だから久しぶりで、姿を消すの忘れてました。へへへ」
この二人、あやつのこと、ようやっと神と信じおったようじゃわい。おっちょこちょいの神には、先が思いやられるがのう。
それにしても、あのセコビッチとかいう者、清めの水で血を洗うとは何事じゃ。天罰が下るに決まっておるわいな。
作品名:おーまいごっど「ビンタの悪霊」 作家名:亨利(ヘンリー)



