小説が読める！投稿できる！小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ！

第弐話　僕は神様

「セコビーも何かお願いしたら？」
「そうだな」
　セコビッチはしばらく考えて、

　パンパン！

「じゃあ、やっぱりセニョがビンタされませんように」
と言って、鈴の紐を引っ張った。すると、

　ドンガラガッシゃーン！！！

　強く引いたわけでもないのに、鈴が落下して、賽銭箱の上に落ちてきた。二人は目を丸くして飛び上がった。


　その音を聞いて、拝殿の奥で目を覚ました者がおる。そうじゃ。あの神じゃ。天界から落ちてきて、この寂れた鈴成神社にやって来た落ちこぼれの神じゃった。
　そやつは拝殿の格子戸から外の様子を覗くように見た。そして落ちた鈴を抱えて、あたふたするセコビッチと、鈴の紐を捲り上げるセニョールを見て、一度大きな欠伸をした後、ゆっくりと立ち上がった。

「な、何で落ちたのかな？」
「古いから、壊れかけてたんだろ。どうする？　梁に届かねえよ」
　賽銭箱に登ろうとするセコビッチを、セニョールが止めようとしている。
「コラコラお前たち。そんなに騒ぐこと無いでしょう」
神様は格子戸の奥から、鈴を抱えて騒ぐ二人に声をかけた。セニョールとセコビッチは動きを止めて、拝殿の薄暗い中を凝視すると、戸が開き、中から白装束の小太りの男が出てきた。
「うわあ、すみません。これ落っこちて来ちゃって」
「強く引っ張ったりしてませんよ。なのに勝手に・・・」
二人は焦っている。
「だからそれでいいんだよ。そんなに驚かなくても。ただ『当たり』が出ただけです」
それを聞いて、二人は少し安心した。
「いやあ、びっくりしました。まさか中に神父さんがいたなんて」
「セコビー！　神父さんじゃなくて神主さんだよ」
セニョールがあわてて言った。
「僕は神主じゃないですよ」
「え？　でもその格好は？」
セコビッチが怪訝そうに聞くと、
「これ？　この格好？　見て分かんない？」
きょとんとしている二人。