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北へふたり旅 81~85話

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北へふたり旅(84) 札幌へ⑨

 列車が札幌駅へ到着した。ホームは2階にある。
エスカレータで1階へおりていく。しかしあまりの広さに驚いた。
西と東に改札口がある。

 「西と東。どっちが近いんだ・・・」

 想定を超えるひろさに思わず、立ち止まってしまった。

 はじめておとずれた観光客が、おなじように戸惑っている。
案ずることはなかった。結果はどちらも同じ。
改札のさき、構内を南北につらぬくコンコースがあった。
西から出ても東から出ても、ぐるっと回れば好きな方向へ行くことができる。
ただし西から出たほうが観光案内所やコンビニ・薬局・土産店などが
豊富にある。

 めざす目標は、札幌のシンボルのひとつ時計台。
今夜のホテルは、時計台通りにある。
西コンコースから南へ出る
すぐわかるだろうと簡単に考えていたが、広場へでてさらに驚いた。

 高層ビルが林立している。
東へ目を向ける。JR北海道が2003年に建設した札幌駅ビルが目に
飛び込んでくる。
地上38階 地下4階。173mの高さは札幌一を誇る。
駅ビルを挟み西に建つ地上8階建ての大丸札幌店も存在感がある。

 南へ目を向ける。高層の読売札幌ビルがある
23階建ての住友生命札幌ビル、札幌で初めて100mを越えた札幌センタービル。
おおいな建物がつぎつぎ目に飛び込んでくる。

 「すごい。高層ビルばかりが目に飛び込んでくる。
 近代的だな、札幌は」

 「人口195万人です。
 東京以北で最大の都市ですよ。
 北海道の人口の4割が、ここに住んでいます。
 群馬県の人口とほぼいっしょ。
 もうひとつ。町の作り方におおきな特徴があります。
 わかるかしら。あなたに」

 目の前。東西にはしる道路は、北5条・手稲通りと表示されている。
駅前広場から南へ向かう道路が、この位置から3本見える。
東から西3丁目通り・西4丁目通り・西5丁目樽川通り。

 「北5条に西3丁目・・・京都の市街地に似た表示だ。
 あっ、もしかして碁盤の目になっているのか、ここは」

 「ご名答。
 明治新政府は蝦夷地と呼ばれていたこの地を、北海道と改称します。
 開拓使による街づくりが始まりますが、この時参考にしたのが京都の街。
 京都の街が碁盤の目になっているのは、唐の都・長安の街づくりを
 参考にしたため。
 札幌の街づくりは日本の都であった京都、つまり唐の都の長安の街づくりが
 反映されているの。
 ちなみに北と南の境目は、大通り公園。
 公園から北は北1条、北2条とすすんで、ここ札幌駅は北6条。
 東西の境目は、市内を流れる創成川です」

 「すごいね君。まるで社会科の先生みたいだ」
 
 「どういたしまして。スマホで検索したらた出てきただけです。
 そこ。西3丁目の通りを南へ下ると、札幌市の時計台です」

 「東コンコースから出て来れば、真正面が西3丁目の通りだ。
 失敗したねおれたちは。西から出てきちまった。
 ずいぶん回り道をしたことになる」
 
 「なに言ってんの。いまさら。
 下調べもろくにしないではるばる、ここまでやって来たくせに。
 無事に着いただけでもたいしたものです。
 最初から迷子みたいなもんでしょ。あたしたち」

「誰かが、迷子になりたくて旅に出る。と書いていた。
 旅には目的がある。
 目的地へ着くことが旅の目標だと思っていたが、知らない土地で迷子になる。
 それもまた旅の醍醐味のひとつかな」

 「迷子になるまえにホテルへ荷物をあずけましょ。
 本格的に迷子になるのは、それからです。
 うふっ」

 
(85)へつづく